実話をベースにした韓国映画は“アベンジャーズ天下”を崩すことができるか?
2019年05月08日

しばらく『アベンジャーズ/エンドゲーム』の勢いに押されていた韓国映画が反撃に繰り出す。実話を前面に押し出したさまざまなジャンルの映画が『アベンジャーズ/エンドゲーム』の興行バトンを受け継ぐ準備をしている。
5月1日先陣を切って果敢に挑戦状を突きつけた、ユク・サンヒョ監督の『私の特別な兄弟(原題:나의 특별한 형제)』は“アベンジャーズの天下”の中でも存在感を示している。
優れた頭脳を持ちながら全身が麻痺した兄のセハ(シン・ハギュン)と、健康な肉体を持っているが知的障害を持った弟トング(イ・グァンス)。一滴の血も混ざっていなくても20年間、支えあって生きる兄弟の物語が静かな感動を与え口コミが広がっている。公開から一週間で累積観客100万人を目前に控えている。
特にこの映画は実話をベースにしたという点でさらに感動を与える。10年間、一心同体で生きてきた身体障害者チェ・スンギュ氏と知的障害者のパク・チョンニョル氏の物語をスクリーンに移した。
そして今月15日には『陪審員たち(原題:배심원들)』と『悪人伝(原題:악인전)』がそろって観客を訪れる。
『陪審員たち』は2008年に国内に導入された国民参加型裁判を扱った法廷劇だ。
初めて国民参加型裁判が開かれる日、職業や年齢などがそれぞれ異なる8人の陪審員が法廷に集まる。被告人は母親を残忍に殺害した疑いで起訴された息子。証拠や証人、目撃者まで存在し有罪がほぼ確定され量刑の決定だけが残っている状態だが、陪審員たちが有罪自体に疑問を提起し、裁判は予期せぬ局面に流れる。
これまでの人生で他人を審判したことのない平凡な人々が、各自の人生経験と常識を土台に状況を覆し、次第に事件の真相を暴いていく過程が快感を与える。
限定された空間と時間の中で繰り広げられる脚本だが、個性の強いキャラクターと緻密な展開が作品を豊かにする。
この作品で長編デビューしたホン・スンワン監督は、2008年、実際に国民参加型裁判で行なわれた殺人事件をモチーフに、類似事件80件あまりと判決文を調べ、シナリオを書いた。
『悪人伝』は今月14日に開幕する第72回カンヌ国際映画祭の非コンペティション部門のミッドナイト・スクリーニングに招待され注目された作品。組織暴力団のボス(マ・ドンソク)と、強力班の刑事(キム・ムヨル)がお互いの敵である連続殺人犯(キム・ソンギュ)を追うために手を組むという内容のアクション・ノアールだ。
誰がいちばん“悪いヤツ”なのか賭けをするかのように3人のキャラクターが人間の本性のどん底を露わにし、大いに奔走する。マ・ドンソクとキム・ムヨルの“決着アクション”を見ることができる。マ・ドンソクが主演を務めた『犯罪都市』よりもアクションの強度はさらにアップし、青少年観覧不可の等級が示す通りに暴力レベルもかなり高い。“マブリー”の愛称とは違う、堕落したマ・ドンソクのキャラクターを見るのもまた異なる醍醐味だ。この作品も実話からモチーフを得ている。
イ・ウォンテ監督は「勧善懲悪な話ではなく、悪と悪が対決する矛盾的な状況を通じて、相対的に動き始める善悪の問題を扱ってみたかった。2005年に暴力団の間で成人向けのゲームセンターに関する利権争いが激しく、関連記事を見ながらインスピレーションを得た」とした。
今月22日に封切られるチャン・ギュソン監督の『幼い依頼人(原題:어린 의뢰인)』)は、2013年に発生した「漆谷(チルコク)児童虐待死亡事件」を題材にした作品。故郷の児童福祉センターでわずかの間勤務した弁護士のジョンヨプ(イ・ドンフィ)は、ユソン演じる継母(ユソン)の虐待を通報した10歳の少女ダビン(チェ・ミョンビン)と弟のミンジュン兄妹を知るようになる。大手のローファームに合格してソウルに上京したジョンヨプはある日、ダビンが弟を殺したと自供したという衝撃的な知らせを聞き事件の真相を究明し始めた。
実際の事件を脚色した同作品は、法の死角地帯に置かれている児童虐待問題をストレートに喚起する。たとえスクリーンだとしても、継母の暴力と幼い兄妹の凄絶な状況を直視するのは容易ではない。実話から出発した物語に、その痛みと苦痛の強度はさらに大きく感じられる。近隣住民と社会が“他人の子どもの問題”という理由で、児童虐待を知りながら放置する姿はなおさらだ。映画はそれでも痛みから最後まで顔を背けない“よい大人”を前面に出して一筋の希望を語る。
