旧正月に韓国新作映画3本公開…コメディvs政治ドラマ、軍配はどちらに?
2020年01月16日

旧正月の劇場街には、コメディ旋風が吹くのか。はたまたずっしり重い政治ドラマの風が吹くのだろうか。旧正月連休(24〜27日)の新作映画公開日程が確定した。韓国映画は、『MR. ZOO:消えたVIP(原題:미스터 주: 사라진 VIP)』と『ヒットマン(原題:히트맨)』、『南山の部長たち(原題:남산의 부장들)』の3本が、今月22日に同時公開される。このうち2本がコメディ映画だ。新年を軽く楽しい気持ちでスタートしたい観客を狙う。昨年の旧正月連休時に大ヒットした『エクストリームジョブ』で旧正月のコメディ映画がもたらす効果を学んだためだ。
『南山の部長たち』は、中高年層の観客から多くの支持を得るものと見られる。韓国近現代史のターニングポイントとなった事件を扱いながら、スパイ映画に負けない緊張感と面白さを提供するウェルメイド映画だ。
俳優たちのキャラクターチェンジも見どころだ。『MR.ZOO』でワンマンショーのコミカル演技を披露したイ・ソンミンは『南山の部長たち』ではVIP役として正反対の役を演じる。 『南山の部長たち』に出演したイ・ビョンホンもやはり『白頭山(原題:백두산)』の中の北朝鮮要員リ・ジュンピョンの残像を完全に消している。
◇良い試みではあったが... 『MR.ZOO:消えたVIP』
これまでハリウッド映画で見かけたしゃべる動物の登場だ。おなじみの素材だが、韓国映画としては新しい試みだ。動物が苦手な国家情報局のエース要員“チュ・テジュ”(イ・ソンミン)は、昇進しようと、中国から来た特使パンダ“ミンミン”の警護を買って出る。ところが、ミンミンを奪取しようとする犯罪組織を追っていたところ、事故に遭い、目が覚めた瞬間、動物たちの言葉が聞こえ始める。テジュは軍犬アリーと共に消えたミンミンを探しに出る。
試みは高く評価できるが、コメディ映画の本分である“笑い”の打率は高くない。いざ笑わせようとすればするほど、ことごとく滑る。大げさな演技とお粗末なストーリーのせいだ。主演を担ったイ・ソンミンが何とか劇を生かそうと孤軍奮闘するが、一生懸命やっているからこそ気の毒にも感じる。
「先生」の演技トーンをくり返すキム・ソヒョン、映画『7番房の奇跡』で天才子役と呼ばれた俳優カル・ソウォン、悪役を担ったデヴィッド・リー・マキニスなど、他の俳優たちの演技もうまく調和しない。ここまで来れば、俳優の問題ではなく、演出力のせいだという見方が正しいのかもしれない。
韓国語を話す様々な動物たちは、CGで比較的自然に具現化した。総制作費90億ウォンで成し遂げた結果だ。多くのノウハウを持ったハリウッドレベルと比べるまでもないが、韓国映画の素材の可能性を広げたという点では意味があった。動物の声はシン・ハギュン、ユ・インナ、キム・スミ、イ・ソンギュン、イ・ジョンウンなどそうそうたる俳優が参加した。増加するペット所有世帯とファミリー層がターゲットだ。『善惡の刃』、『もうひとつの約束』を演出したキム・テユン監督の新作だ。
◇B級感性いっぱいの『ヒットマン』
はっきり言ってB級の感性だ。 YouTube、ウェブ漫画、ラップといったような若者の趣向を取り入れながらもおやじギャグを連発する。『キングスマン』からクォン・サンウ主演の映画『探偵なふたり』シリーズまで様々な映画が思い浮かぶ。
子供の頃、不慮の事故で両親を失った後、国家情報院要員のトッキュ(チョン・ジュノ)に抜擢され、暗殺要員になったジュン(クォン・サンウ)。ウェブ漫画作家の夢を叶えるため、国家情報院を脱出するが、15年経った今、彼が連載するウェブ漫画には様々な悪質コメントが走る。稼ぎもぱっとせず、妻の小言に苦しむ。辛いジュンは、“ラップの歌詞のように、自分のことを素直に書け”という娘のアドバイスを受け、酔った勢いで、国家情報院時代に経験した1級機密をウェブ漫画で描く。このウェブ漫画がインターネット上で爆発的な反応を得るが、彼は国家情報院とテロリストの二重ターゲットになってしまう。
初中盤まではかなり斬新だ。ジュンの過去をアニメーションで表現した部分やジュンが描いたウェブ漫画を再現したシーンに目が留まる。どう展開していくのか読めないストーリーにも引き付けられる。アクション演技や生活感溢れる演技を自由自在にこなすクォン・サンウと久しぶりにコミック映画に帰ってきたチョン・ジュノのタッグも素晴らしい。
しかし、序盤にかなりの力を注いだせいだろうか。ジュンが二重ターゲットになった後から劇は突然失速し、迷走し始める。痛快さと面白さは消え、あっけない展開やセリフがその場を締めくくる。クライマックスでは、競争でもするかのように、俳優たちが一同に大声で叫ぶため、気が散ってしまうほどだ。B級感性に寛大な若者が主な観客となるだろう。総製作費は99億ウォン、損益分岐点は240万人だ。
◇ウェルメイド政治劇『南山の部長たち』
久しぶりに出てきたウェルメイド政治ドラマだ。韓国近現代史のひとこまをスクリーンに移した。『インサイダーズ/内部者たち』、『麻薬王』に続くウ・ミンホ監督のいわゆる「欲望」3部作の完結編だ。キム・チュンシク作家が書いたノンフィクションのベストセラーが原作だ。政治工作などを行った中央情報部の18年間を通してパク・チョンヒ(朴正煕)政権にスポットライトを当てた本で、その分量は880ページにも上る。
同作品は、その中の1979年10月26日にキム・ジェギュ(金載圭)中央情報部長がパク・チョンヒ大統領を暗殺するまでの40日間を扱った。実在の人物は、劇中キム・ギュピョン(実際のキム・ジェギュ)、元中央情報部長パク・ヨンガク(キム・ヒョンウク)、警護室長クァク・サンチョン(チャ・ジチョル)という名前で登場する。
映画は、18年間忠誠を尽くしてきたキム・ギュピョンがなぜ銃声の主人公にならなければならなかったのかを彼の視線と心理に沿いながら描いていく。キム・ジェギュに対する歴史的評価が分かれているぶん、映画もやはり、彼の人間的な姿や動機を立体的に扱う。
映画は、10・26事件が起きる40日前、大統領から捨てられたパク・ヨンガクがアメリカの聴聞会に出席し、維新政権の実体を暴露するシーンで始まる。
彼を止めるため、キム・ギュピョンとクァク・サンチョンが乗り出し、首脳部の権力地形にも変化が生じる。序列2位だったキム・ギュピョンは、クァク・サンチョンと忠誠競争でことごとく押し出され、政治的守勢に立たされる。 「コリアゲート」などで韓米関係が悪化する中、キム・ギュピョンは、政権の終わりが近付いていることを直感する。釜馬民主抗争の対策を前に、大統領とかもした摩擦は、彼の「決心」を早めるきっかけとなる。権力争い、大統領に対する人間的な背信感や侮蔑感、長期独裁に対する幻滅、愛国心など、彼が銃を撃つことになった動機が複合的に描かれる。
映画は、熱い歴史を冷たく冷静に描いた。だからといって面白さを欠いたわけではない。アメリカや韓国、フランスを行き来しながら、緊迫して展開される事件を追っていくと、一本のスパイ映画を見ているようだ。すべて知られている話だが、印象的な画面構成と音楽、編集で緊張感を一層高める。
何よりも俳優たちの演技は、さすがのものだ。イ・ビョンホンは、目つきと表情だけで観客を唸らせる。彼の顔がしばしばクローズアップされる理由は、ここにある。「パク大統領」役のイ・ソンミン、パク・ヨンガク役のクァク・ドウォン、クァク・サンチョン役のイ・ヒジュンは実在の人物と重なって見えるほど高いシンクロ率を披露する。登場と同時に、笑いと驚きを抱かせる人物もいる。
映画は政治色をなるべく排除し、人物間の心理描写に焦点を合わせたが、素材自体が政治的なぶん、スクリーンの外でも様々な話が出てくると思われる。70年代の世相を具現するのに208億ウォン(損益分岐点500万人)の制作費がつぎ込まれた。
