映画『私を救わないでください』、実際の事件をモチーフに描かれた“世の中で最も悲しいアイロニー”

2020年09月02日

大人たちは子どもたちが幼いという理由で否定的な感情を隠すことなく伝える過ちを犯すことがある。さらには、子どもたちにも彼らの人生があり、それを選択できる権利があるという点まで忘れてしまう。
映画『私を救わないでください(原題:나를 구하지 마세요)』はこのような大人たちの世界で、危うい暮らしを送る1人の少女と彼女を救いたい1人の少年の物語だ。
父親が借金を残し自ら命を絶った後、ソンユ(チョ・ソヨン)は母親(ヤン・ソミン)とともに、知り合いが誰もいない場所に引っ越してくる。ソンユは借金に苦しめられる母親さえも自分を捨ててしまうのではないかと、わざとしっかりしたふりをする。
転校した学校でトラブルメーカーのジョングク(チェ・ロウン)がソンユに関心を示し、友人たちと距離を置いていたソンユの心も少しずつ開いていく。
昼夜を問わず仕事をし、借金を返済しようと努力していた母親も次第に疲れ果て、ソンユの不安も大きくなる。そんなある日、母親はソンユに「お父さんに会いに行く?」と尋ねる。ソンユはこの言葉の意味を理解し、母親に付いていく。
作品は厳しい生活を送る平凡な大人たちの人生が、子どもたちにどれだけ暴力的になりうるか、誇張せずに描く。両親の苦痛は家族の苦痛になり、子どもにそのまま伝わる。幼いからといってその苦痛を感じないわけではない。
ソンユの母親はソンユに酒を勧め、借金に苦しめられている事実を隠さない。借金を返してほしいという母親の友人の話を真横で聞き、ソンユは母親の債務者を自ら訪ね、金を返してほしいと言ったりもする。
演出を務めたチョン・ヨンギョン監督は、2016年秋に洛東江(ナクトンガン)の下流で母子が遺体となって発見された事件を、この作品のモチーフにしたという。チョン監督は「子どもが残したメモには『私が死んだら色紙とクロスステッチの本を、折り紙が好きだったり、貧しい人に配ってください』という文章が書かれていた」とし、「このメモを残したその子どもはいったいどんな気持ちだったのだろうと思った」と伝えた。
一見すると、母親に付いていくことにしたソンユの決定は自分の意思だと錯覚するかもしれないが、1人取り残される怖さからそうしただけだ。劇中のソンユの言葉「私を救わないでください」は、実際は「助けてくれ」という切実な“救助要請”だった。
結末部分はモチーフになった実際の事件とは異なり、小さな希望を与える。ジョングクの関心や愛情がソンユを絶望の中から救い出すことができる、そんな希望だ。
数々のラブコメドラマや映画『麻薬王』などに出演したチョ・ソヨンがソンユを、ドラマ「グッド・ドクター」や映画『ハッピートゥゲザー(原題:해피투게더)』などに出演したチェ・ロウンがジョングクを演じた。特にチェ・ロウンは茶目っ気たっぷりで明るいが、大人のように、時にはそれ以上に思慮深いジョングクとして観客に心温まる笑顔を届ける。
映画『私を救わないでください』は今月3日に公開予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で10日に延期された。

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