アン・ソンギ主演映画『紙の花』、深みのある演技で伝える希望のメッセージ

2020年10月21日

映画『紙の花(原題:종이꽃)』は穏やかだがはっきりと希望を語る。
人生に疲れたり挫折したなら、今逃しているものが何なのか振り返れと声をかけているようだ。
『紙の花』は事故で身体が不自由になった息子と一日一日を踏ん張るように生きている葬儀士のソンギル(アン・ソンギ)が、目の前の家に引っ越してきた母娘との出会いを通じて、再び生気を取り戻していく物語。息子のジヒョク役はキム・ヘソン、前の家の母娘ウンスクとノウル役はそれぞれユジン(S.E.S.)と子役のチャン・ジェヒが担った。
何より俳優アン・ソンギの深みのある演技がスクリーンを越えて劇場の空気まで圧倒する。彼は静かにソンギルを演じる。生計に責任を負った家長が背負う疲労感や生きる意志を失った息子を守りたい父性愛、人間に対する憐憫を淡々と伝える。
63年の演技人生の貫禄のおかげか、彼の顔に深く刻まれた皺や、呆然と背を向けた後ろ姿からは、この時代の家長、父親、人間として感じる苦悩がそのまま伝わる。彼が劇中純粋な子どもノウルと見せるいわゆる“ケミストリー(内的調和)”も観客たちを笑顔にさせる。
映画は終始一貫、希望というメッセージをストレートに伝える。秘められた伏線や枠組みのある葛藤構造は無いまま、一貫して登場人物の内面を明るく照らす。
ただ登場人物は一様に平面的で、魅力を感じにくい側面がある。ウンスクは雨が降っても天気が良くても、ただひたすら幸せなキャンディのような人物だ。作品を導くソンギルは終始慎重で、彼に金儲けを強要する葬儀会社の職員は非人間的に感じられるほど世俗的で、むしろ現実味に欠ける。
各人物が抱えている心の傷についての説明も省略されたり、突然飛び出してきたりするため、観客たちが感情移入をするのに限界がある。
ウンスクが家庭内暴力を受けた過去を明かすシーンでは、込み上げてくる感情が高ぶらないといけないが、人物に対する共感が形成されていないため、このような告白が唐突に感じられる。
物語の蓋然性も物足りなさが伴う。作品の序盤に貧しいが気持ちは優しい人物たちが続々と登場し、後半に進むとどういうわけか、お互いを慰め合いながら連帯感を形成する。
伝えたいことが多いせいか、前後の脈絡のない設定が全体的な流れを断ち切る点も残念な部分だ。例えば、悪夢にさいなまれるソンギルは、過去に光州(クァンジュ)に派遣され、市民たちの死を知らないふりをした軍人という事実が後になって明らかになるが、このような設定を通じて伝えようとするメッセージは曖昧だ。
『紙の花』は「第53回ヒューストン国際映画祭」で韓国俳優初の男優主演賞受賞と、最優秀外国語映画賞に該当するプラチナ・レミ・アワード(白金賞)を授賞した。映画は今月22日に韓国で公開される。

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