2020年はトロットの年!…世代を超えて広がった成功の秘訣に迫る
2020年12月24日

コロナ禍でなければ、忘年会シーズン真っ只中。会社の同僚や友人とカラオケに行き、トロット(韓国の演歌)を熱唱する人も多くいたはずだ。
世代や性別を越え、韓国では空前のトロットブームが起こっている。流通業界も、ファンを狙ったいわゆるトロットマーケティングに本格的に乗り出した。
ビッグデータ上のトロットに関する投稿件数を見ると、人々の関心がどれほど高かったのか知ることができる。2020年はまだ終わっていないが、現段階ですでに196万件の投稿がなされている。
昨年41万件、2018年は20万件だったのに比べると、その投稿数は約5倍~10倍に増えた。
また、NAVERが発表した「今年の検索ワード」ランキングの「人物ランキング」を見ると、1位はトロット歌手のイム・ヨンウン、続いて2位がBTS(防弾少年団)だった。
またトロットと言えば欠かせないのが、やはりナ・フナだ。
彼は、今年の秋夕(チュソク/韓国のお盆)にアンタクト公演「2020秋夕大企画大韓民国アゲイン ナ・フナ(原題:2020 한가위 대기획 대한민국 어게인 나훈아)」を行い、大きな話題となった。この公演はKBSの特別番組として放送され、視聴率は脅威の29%を叩き出した。
今年73歳(数え年)のナ・フナ。若い世代から見ると、おじいちゃん世代とも言えそうな年齢だが、むしろ若者世代に熱狂的ファンが多いという。その秘密は、世代を超えて魅了する歌詞にあった。
MVがBTSやBLACKPINKを制するほどの人気となった「Brother Tes!」の歌詞を見てみると、サビの部分で“世の中はどうしてこうなった”という言葉が出てくる。“なぜこんなに辛いんだ”という多くの若者の心を代弁する歌詞だと評価されているが、このように共感を呼ぶ歌詞が支持されているようだ。
また、ナ・フナのコンサートチケットは入手困難な事でも知られており、その困難さはBTS級だとも言われている。もはやチケット戦争だ。
また面白いデータもある。音楽配信プラットフォームが発表したデータによると、彼の楽曲の聴取割合は、20代が33%で1位、30代が27%と続く。つまり2、30代が彼の楽曲を好んで聞いており、中高年層だけでなく、若い世代にまで浸透したという事がわかる。
一方で、“最近、TVをつければトロットが出てくる、このままでは供給過多になるのでは”との声もあるが、実際のところはどうなのだろうか。
韓国インサイト研究所の「2020年トロット関連番組」についての分析によると、トロット歌手さえ出演すれば視聴率が5%から最大で10%まで上がるとの結果が出た。つまり、各社トロットスターのオファーに躍起になっており、トロット歌手はこれに応えるべく番組出演に引っ張りだこになっている状況だ。
KBSの情報番組「6時、私の故郷(原題:6시 내고향)」では、農業活動遠征隊としてトロット歌手シンソン、ノ・ジフン、ファン・ユンソン、キム・ギョンミンが出演し、彼らが心をこめて畑仕事をする姿や、休憩中に食事をする姿が放送され、大きな話題となった。農作業をしながら普段見る事のできない一面を見せたり、その場でトロットバージョンのクリスマスソングを歌ったりして視聴者を楽しませてくれた。村で即席コンサートを開き、コロナに苦しむ住民の心に慰めを与えたりもした。
一方、消費の中心となる中高年層のファンの影響も見逃す事はできない。彼らをターゲットにしたマーケティングを行えば、あらゆる商品が飛ぶように売れる効果を得る事ができる。それは、CD売上やグッズ売上といった事に限らない。“自分の愛するスターを飢え死なせるわけにはいかない”という母親心から来る消費だ。
例えば、キム・ホジュンの場合、全国から降り注ぐような量のキムチ、塩辛が送られてきたという。これを保管するため、業務用冷蔵庫を2台購入したそうだ。これらすべては中高年層のファンが送った品々だ。
ファン文化に中高年世代が参入した事により、流通業界も彼らを狙った戦略を立てている。
中高年世代の好きな商品と、普段からスターが好きだと言っている商品をタイアップさせる手段だ。ファンがその商品を積極的に消費し、宣伝してくれるという一石二鳥の効果を生み出している。
イム・ヨンウンの場合、SNSにコーヒーを飲んでいる姿をよくアップしている。イム・ヨンウンのファンクラブは、このコーヒーを“英雄(ヨンウン)コーヒー”と呼んでおり、このようなファンの姿をみた企業が、彼を広告モデルに抜擢した。このようなケースは少なくない。
またこの広告効果は、顕著に売上に表れた。イム・ヨンウン起用後、40代の購入割合が27%上昇し、次いで50代の購入割合も14%にまで上昇した。
かつては、下火となったジャンルとして見られていたトロットが、なぜ今このように多くの人を魅了しているのだろうか。
それには、いくつかの理由があげられるが、その1つにテレビ番組がある。中高年の文化として敬遠されていたトロットが、最近ではバラエティやオーディション番組として形成されながら、人気が爆発した。その中で、好奇心旺盛な若年層の心をつかみ、共感を呼んだ。さらに、トロット歌手の年齢層が下がった事により、あらゆる世代に馴染む文化となった。
コロナ禍の今年、トロット歌手たちは心の防疫にも努めながら大忙しだったことだろう。
もうすぐ迎える年末年始、トロットを聞きながらおうち時間を過ごしたいものだ。
