ファン・ジョンミン主演映画『人質』のピル・カムソン監督、「序盤に観客を引き込む没入感に気を使った」
2021年08月13日

俳優ファン・ジョンミンが映画の中、拉致されたトップスター“ファン・ジョンミン”を演じる『人質』は、現実と虚構の間で観客たちの没入感を調整しながら綱渡りをする。
ピル・カムソン監督は12日、リモートインタビューで、俳優が実際の自分を演じる映画の設定は観客たちを映画に没入させる要素にもなりうるが、逆に妨害の要素にもなりかねないので悩みが深かったと打ち明けた。
彼は「(映画序盤は)喜劇のように物語が進むが、人質犯が『まだ状況が把握できないのか?これはマジだ』と言った時から観客を一気に引き込みたかった」とし、「その瞬間、映画の冷酷な部分が浮き彫りになり、観客が『これはただ事ではないんだ』と感じ、没入できるよう気を使った」と述べた。
映画はファン・ジョンミンを代表する“お膳立て”の受賞コメントで始まるが、マスコミのスポットライトなどを活用し、主人公のファン・ジョンミンが、実際に観客たちが知るファン・ジョンミンだということを短く直接的に示す。導入部をどのようにスタートすればいいかたくさん悩んだというピル監督は、「やや果敢な演出を試みた」と伝えた。ちなみに“お膳立て”の受賞コメントとは、彼が『ユア・マイ・サンシャイン』で2005年青龍映画賞の男優主演賞を受賞した際に、「自分は一介の下っ端俳優。60人あまりのスタッフが準備してくれたお膳を、自分はただ美味しく食べればいいだけなので」と制作陣に花を持たせたコメントに由来する。
ピル監督は「予告編が公開される前は、映画をコメディだと思っている方が多かった。だが我々の映画はリアリティアクションスリラー。リアリティを失わないようにたくさん努力をした。一瞬でも没入感を損なってはいけないので、そのポイントを逃さないようにした。人質と人質犯の描写といった、呼吸が間延びする部分は取り除いてリズム感を生かした」と振り返った。
撮影と美術も臨場感を与えるディテールな要素に力を入れた。拉致という緊迫した状況を収めるため、カメラを停止せず動かし続けたという。そして拉致事件の映画にありがちな画から脱するために、拉致犯たちのアジトにオレンジやグリーンの色味を取り入れたと語った。
暴力的なシーンは間接的に見せようと努力したが、人質が感じる恐怖感に集中したところ、最初は青少年観覧不可の等級を受けたとも伝えた。映画は刺激的なシーンを削除した後、15歳以上観覧等級を受け、今月18日に公開される。
海外で俳優が実際に拉致された犯罪事件をモチーフにした物語は、原作の中国映画『誘拐捜査』(2015)があるが、方向性が違うとピル監督は説明した。
彼は「『誘拐捜査』はウー(アンディ・ラウ)が人質を救う映画で、『人質』は徹底的に(人質である)ファン・ジョンミンが生きて脱出する死闘を描いた作品」とし、「これまで爽快に事件を解決したり、感動を与えるヒューマン映画に出演してきたファン・ジョンミンが被害者役で登場する点も新鮮だと思う」と述べた。
“ファン・ジョンミンの、ファン・ジョンミンによる、ファン・ジョンミンのための”映画だが、千倍の競争率を突破した新人たちで満たしたさまざまな個性を持つ拉致犯や、捜査網を狭めてくる警察などを適切に活用する。ここにファン・ジョンミンの流行語、「ヘイブラザ~」、「トロワ~(かかってこい)」といった名ゼリフ(『新しき世界』より)を合間に添え、緊張感を和らげ疲労度を下げる。
ピル監督は「人質犯たちがいるアジトは静的で重い空気が流れる一触即発の状況。代わりに警察の動きは緊迫を持たせてバランスを取ろうとした」とし、「人質犯は新人俳優たちが演じたが、人質犯といえば思い浮かぶイメージから脱皮してほしかった。『どうやってあんな組み合わせが?』と思わせながらもしっくりくるようにした」と述べた。
シナリオを書く段階からファン・ジョンミンをキャスティングの第一候補に考えたというピル監督は、撮影現場で彼の演技に見とれていたという。ファン・ジョンミンは演技だけでなく、数多くのアイデアを投げながら作品に積極的に参加したが、ズボンに小便を漏らすシーンも彼のアイデアだと述べた。短編演出作『Room 211(原題)』(2002)、『ある約束(原題:어떤 약속)』(2011)以来、今回の映画で長編デビューをするまで長い時間がかかったというピル監督は、そんなファン・ジョンミンに対する感謝の気持を伝えた。
