俳優キム・ムヨル、映画『ボイス』で振り込め詐欺の設計者を熱演…「共感できないキャラクターだった」
2021年09月15日

振り込め詐欺をリアルに描いた映画『ボイス(原題:보이스)』。劇中、登場する振り込め詐欺の設計者クァクプロは、一時は金融業界で成功したエリートだったが、犯罪に手を染めどん底に落ちた人物だ。
そのどん底で、相変わらずそれらしく着飾り、庶民たちの切実な希望や不安に深くつけこんで、全財産やそれに近い大金を強奪し喜ぶ悪らつな人物でもある。あえて被害者に再び電話し、あざけ笑うところも卑劣、極まりない。
クァクプロを演じた俳優キム・ムヨルは、公開を前日に控えた14日に行われたオンラインインタビューで、「理解しようとしたが、共感できなかったキャラクター」だと述べた。
さらに「映画の序盤に被害者に電話して『(カネを)大切に使わせていただく』と話す場面があるが、これは実際の事例だった。基本的に演技をするには、何とかその人物を理解しなければならないが、それが一番難しかった。クァクプロや振り込め詐欺の組織のあくどさや極悪非道さを表現するには、共感する気持ちを形成しなければならないが、それがどうしてもできなかった」とも付け加えた。
実際に母親が、息子キム・ムヨルを名乗る振り込め詐欺のメールを受信した経験があり、これが映画を選ぶことになったきっかけになったりもした。
彼は「自分でも気付かないうちに自分の情報が流出しており、自分についてある程度把握をしてから名乗っているということにぞっとした。他人事だと思っていた振り込め詐欺を身近に感じた」と述べた。
「いつも悪役を演じる時は、現場で同僚俳優や監督たちに『(憎らしくて)殺したいほどだった』と言われると、職業的な醍醐味を感じたりしていたものだが、今回は実際の被害者が存在する犯罪であるため、そのような話は簡単にできなかった」とも述べた。
共感しがたい人物を演じる負担は大きかったが、想像力を加え、“生きた存在”にしていく過程には達成感を得たりもした。
キム・ムヨルは「振り込め詐欺の犯罪自体は実際の事件や資料を基にしたが、犯罪設計者のクァクプロは映画的な想像力を働かせざるを得ない人物だった。どうすれば観客がクァクプロを“実際に生きている悪いやつ”に感じられるのか、そんな悩みやプレッシャーが大きかった。反対に未知の領域ということは可能性も限りない。クランクインの前日まで監督と多くの対話を交わしながら、台本作業を行い、現場で出た新しいアイデアを加えて修正した。容易ではなかったがそれだけ達成感もあった」と明かした。
監督が作ったセリフには、哲学者のニーチェの言葉を引用するなど、学究的で口語体から外れた単語があり、「セリフを言うのが大変だった」とし、「監督の意図を最大限盛り込もうと努力しながら、少し安っぽいキャラクターを生かそうと現場で『ウソの基本はファクトチェックだ』というようなセリフを作ったりもした」と伝えた。
そのようにして彼が作り出したクァクプロは「自分が誰よりも賢く能力があると信じている人間。成功街道を走り頂点にいた時と、悪事を犯しこれ以上落ちるところがないどん底に落ちた時、その両極端に内在するものを、よりよくするために手段と方法を選ばない。その中で、どんどん異様になっていく怪物のような人間」だと説明した。
舞台から始まり映画やドラマを行き来しながら休まず働いている彼は「俳優だと呼んでいただけることに感謝している」と述べた。
さらに「俳優も技術職だと思う。技術も磨かなければ腕も落ち技術も衰える。観客に会った時に作品や演技が完成する職業なので、いつになるか分からない最高の作品を作るために、毎回陶磁器を焼く気持ちで臨んでいる」と明かした。
