映画『空気殺人』のチョ・ヨンソン監督、「この作品は加湿器殺菌剤事件を見守っているという警告」
2022年04月11日

映画『空気殺人(原題:공기살인)』は、10年以上続いている加湿器殺菌剤事件が素材だ。
1994年に初めて発売され、17年間で1千万本を売り上げた加湿器殺菌剤の毒性成分により95万人が被害を受け、2万人が命を失った。惨事から11年目となる先月になってようやく最終調整案が出たが、多くの分担金を払わなければならない企業が受け入れを拒否し、事件は依然として進行している。
映画を企画してから6年の時を経て『空気殺人』を披露することになったチョ・ヨンソン監督は最近、試写会後に開かれた記者懇談会で「映画は加湿器殺菌剤の事件が世間に知らされた時に起きた出来事を、時間に関係なく配列したもの」とし、「実際と異なる映画の結末は、“これほどたくさんの人が見守り続けているのだ”という企業と政府への警告」だと述べた。
チョ監督は「このように公開されることになり、とてもうれしくもあるが、申し訳ない気持ちもある。長い時間の中で起きた事件を全て盛り込むには、あまりにも短い時間だったし、被害者の方々がご覧になるには少し足りないのではないかと心配にもなる」としながらも、「多くの方々にご覧いただき、二度とこのような映画が生まれないでほしい」と述べた。
この事件を扱ったソ・ジェウォン作家の小説「菌(原題:균)」を基に多くの資料調査を行ったというチョ監督は、「被害者は、民事訴訟を起こし、企業が毒性実験をねつ造していたことは、インターネットを検索するだけでも容易に分かること」だとし、「被害者の方々に直接会って調査したりもしたが、その方々の個人的な話をあまり出しはしなかった」と説明した。
チョ監督は「被害状況が膨大過ぎて全て盛り込むことができないのが、とても悲しくて苦しかったし、もしこの映画で間違った情報が伝わり、加害集団が被害者を攻撃する手段になるのではないかと恐れた」とし、「そう思うほど、冷静になり、第三者の目で見つめようと努めたが、それはそれで、被害者の方々が残念に思うのではないかと、また心配になった」と付け加えた。
彼は「初めて話を聞いた時は、他の惨事のエピソードのように悲しみを扱わなければならないのかと思ったが、知れば知るほど憤りを覚え、“自分の話”だと思った」とし、「官公庁、病院、学校など加湿器があるところでは殺菌剤を大量に購入して利用していた。我々が間接露出の対象だったことを忘れてはならない」と強調した。
俳優たちも「忘れてはならない話」を盛り込んだ映画の意味を同じ意見で強調した。
被害者家族として、事件を初めて広めることに乗り出した大学病院医師のチョン・テフン役を演じる俳優キム・サンギョンは、「最近、アメリカから輸入した自動車の芳香剤から殺菌剤にあったものと同じ成分が出た」とし、「警戒心を持たなければ再び発生しかねないこと」と述べた。
彼は「僕も加湿器殺菌剤のニュースを見た時、他人事だと思ったが、他人事を自分の事のように感じさせるのが、映画の持つ力」と伝えた。
それとともに「息子が、父親をテレビで見た時、何をする人なのか興味を持ち始めたので、僕が演じる作品が子どもたちに恥ずかしくないか、少しでも役に立てる作品なのかと考えるようになった」とし、「子どもたちと一緒に家族全員で見ていただきたい」と呼びかけた。
肺疾患で突然死したチョン・テフンの妻ハン・ギルジュを演じた女優ソ・ヨンヒは「コロナ禍直前に撮影を終えたのだが、このような状況を経験したことがなく雰囲気を真似してやった。コロナを経験してからようやく理解ができ、とても申し訳ない」と涙を見せた。
姉のハン・ギルジュを失い事件に飛び込んだ法曹人ハン・ヨンジュ役の女優イ・ソンビンは、「誰よりも事件をうまく伝えなければならない役柄だったので、正直言うと本当に難しかった」とし、「気持ちが重くなったせいか、撮影期間中は、痩せてしまった。撮影の最終日に鼻血を出したほどで、どの作品より慎重になったし、集中して挑んだ」と述べた。
殺菌剤の製造会社のチーム長ソ・ウシク役を演じた俳優ユン・ギョンホは「“ヒットは保障できなくても恥ずかしくない映画を作りたい”という言葉に熱い思いで一緒に臨んだ」とし、「私の周りにも被害者がいるという事実を知り、ぜひ演じたいと意気込んでいたが、迷惑をかけてはいけないと思った」と明かした。
彼は「花咲く春にふさわしい愉快な映画ではないが、映画のメッセージが誤解なくうまく伝わることを願う」と述べた。
