イ・ジョンジェ&チョン・ウソン主演映画『HUNT』、カンヌ映画祭で初上映…“猟犬か獲物か”のスパイ劇
2022年05月23日

「映画を楽しんでいただけたことを願っている。ありがとうございます。Merci beaucoup(フランス語でありがとう)!」
20日(現地時間)0時、フランス・カンヌのリュミエール劇場。「第75回カンヌ国際映画祭」のミッドナイト・スクリーニング部門で初公開された映画『HUNT(原題:헌트)』の演出と主演を務めた俳優イ・ジョンジェは、映画が終わった後マイクを持ち、多少震える声でこのように述べた。
彼は、自身の監督デビュー作であるこの作品を見るために劇場に入った時から、緊張した表情を浮かべていた。主演俳優であり親友である俳優チョン・ウソンがそばで見守った。
エンディングクレジットが出ると、観客は1人2人と立ち上がりはじめ、拍手と歓呼を送った。そのスタンディングオベーションは約3分間続いた。イ・ジョンジェとチョン・ウソンもともに拍手をしながら、上気した顔で観客に感謝のあいさつを伝えた。
イ・ジョンジェは、主演俳優としてだけオファーを受けたが「大義のための2人の男の選択が、多くの共感の輪を作ることができる」と考え、演出を決心し脚本も執筆したという。
彼は、人並外れた度胸と勘で、安全企画部の地位を13年間守ってきた1チーム長“パク・ピョンホ”役を演じた。チョン・ウソンは、軍に長く所属していたが安全企画部に異動になった2チーム長“キム・ジョンド”役を担った。2人は南派スパイ総責任者を追いながらライバル構図を形成する。
映画は、パク・ジョンヒ(朴正煕)政権から5・18民主化運動まで、抑圧と被抑圧の現代史を見せるシーケンスで始まる。パク・ピョンホとキム・ジョンドの仕事は、国家の害悪になると考えられる“反抗者”たちを捕まえ、ひとつにまとめて、供述させ社会から追放すること。一見ハンターのように見えるが、実際は上が狙った獲物を、代わりにとらえてあげる猟犬にすぎないのだ。
しかしある日、安全企画部の高位職の中にスパイの総責任者“ドンリム”がいるという事実が明るみになると、2人はあっという間に獲物の身に転落する。彼らはお互いをスパイと疑い、相手にかみつかれないよう、次第に露骨で低劣に秘密を探っていく。
後半部に行くほど2人の正体は、はっきりしていくが、暴走は止められない。どちらか1人が死んでこそ終わる戦いはどんな結末を迎えるのか。
スパイ物であるだけに映画は、格闘と銃撃戦、爆発シーンなど、スカッとするアクションシーンで埋められている。しかし、それよりも推理や追跡を通じて展開される細かい心理戦が、より目を引く。競争するかのように、お互いに深く入り込むが、観客たちは彼らが善役なのか悪役なのか、敵なのか味方なのかも最後まで見当がつかない。
イ・ジョンジェはカンヌ映画祭側を通じて、「華やかなアクションも重要だが、どんでん返しにどんでん返しを重ね、繰り広げられる物語と状況が各キャラクターにどんな決定を下すことになるのか注目してほしい」と伝えた。
重みがあるテーマ意識も響きを与える。イ・ジョンジェは「特定の団体や、政府がイデオロギーを通じて我々を扇動しようとしているのではないか、厳しい制限によって我々を暴政に従わせているのではないかということが気になった」と説明した。
さらに「この映画は、そんな時代の過ちを止めるための努力のひとつ」とし、「我々の良心と正義の自覚が、争いを止めるのに寄与しなければならない」と強調した。
キャラクター自体が持つ力も無視できない。2時間ほど続く心理スリラーが緊張感を失わなかった理由だ。パク・ピョンホとキム・ジョンドは、時に必要以上に非人間的だったり人間的であったりするため、妙に共感を得られる。
実話とフィクションを適切に混ぜ合わせたストーリーは、観客に想像と予測の余地をもたせる。バンコクのテロ、戦闘機での亡命、大学教授のスパイ操作事件などは、すべて実際にあった出来事からインスピレーションを得たようにも見える。ファン・ジョンミン、チュ・ジフン、パク・ソンウン、チョ・ウジン、キム・ナムギル、イ・ソンミンなどそうそうたる俳優たちが友情出演したのも、またちがった面白さを与える。
『HUNT』はカンヌ映画祭で数日間上映され、韓国では今年8月に公開される予定だ。
