カンヌ受賞映画『ベイビー・ブローカー』の是枝裕和監督、「ソン・ガンホは経験したことのない俳優だった」

2022年06月03日

「そんな俳優は今まで経験しなかった。ものすごく驚き、どうやってそんな演技が可能なのかと思った」
映画『ベイビー・ブローカー』を演出した是枝裕和監督は2日、ソウル・三清洞 (サムチョンドン)のカフェで韓国メディアと会い、ソン・ガンホをこのように絶賛した。
彼は「一緒に作品をやる前にも周りを楽しませる明るい方だという印象を受けた」とし、「そんな印象は撮影現場でも変わらなかった」と述べた。
特に、繰り返された撮影にも毎回ユニークに演技をする彼の才能を高く評価した。
是枝監督は「テイクを重ねると演技が固まったり新鮮さが落ちるはずなのに、ソン・ガンホさんはテイクごとにまったく違う演技を見せてくれた。どんなテイクを撮っても新しいセリフを聞くようだった。ソン・ガンホさんのテイクを合わせてDVDに入れるのはどうかという思いにもなった」と述べた。
さらに「監督として私が称賛を受けるとお世辞ではないかと疑うようになるが、出演俳優が褒められるととにかくうれしい。この作品のために最高の賞になった」と、ソン・ガンホのカンヌ映画祭の男優主演賞受賞を祝福した。
『ベイビー・ブローカー』は俳優たちはもちろん、韓国製作会社やスタッフたちとともに作った韓国映画。是枝監督はカトリーヌ・ドヌーヴやジュリエット・ビノシュなどと撮ったフランス映画『真実』(2019)に続いて、2作の長編を外国で演出した。彼は「国境を越えるのが映画の可能性の中のひとつ」だと述べた。
是枝監督は「監督として作業はいつもと同じだった。日本であれ、外国であれ私が感じる感覚には変化がない。好きな俳優たちとともに映画を作っているという感覚で臨んだ。ただ敏感な素材を扱うだけに周辺の取材をたくさんした」と明かした。
『ベイビー・ブローカー』はベイビーボックス (赤ちゃんポスト)に捨てられた赤ちゃんを媒介に出会うことになったさまざまな人々が、次第に家族のような共同体を構成する過程を描く。ソン・ガンホ (サンヒョン役)やカン・ドンウォン (ドンス役)は赤ちゃんを密かに売るブローカーデュオを演じた。先月、カンヌ映画祭で初めて上映された後、「犯罪者を愛らしく描写した」という酷評が出た。
是枝監督は2018年作『万引き家族』も似たような批判を受けたとし、「率直に言って気にしない」と述べた。万引きで生きていくある家族を描いた『万引き家族』は、その年のカンヌ映画祭の最高賞であるパルムドール賞を受賞した。
彼は映画の中の人物を法的基準で判断し、不快感を覚えるならそれがむしろ自身の意図と近いとも述べた。
さらに「白黒がはっきりと分かれる映画は作らない。世界を灰色で描写したかった。子どもを売ろうとする人物たちはほのかな白色を帯び、正義を背にした刑事からはどんな種類の偏見があるだろうか。両者が入り交じりながらある瞬間どんでん返しを成し、赤ちゃんを取り巻く形を考えた。観客が『これは白で、これは黒』と思った通りに映画が描写されなかったとすれば、むしろ私が意図したところなので論議がありうると思う」と付け加えた。
是枝監督は赤ちゃんを捨てるソヨン役のイ・ジウン (歌手のIU)について、「あるドラマを見て、すっかり魅せられた。それがキャスティングのすべて」だと述べた。ドラマを見る前は歌手としても活動する事実を知らなかったが、アルバムを聞き公演映像を見ながら“ファン心”がよりいっそう深くなったと述べた。
ブローカーのドンスを演じたカン・ドンウォンへの称賛も欠かさなかった。
ブローカーらは赤ちゃんを売りに行く道にドンスが育った孤児院に立ち寄り、そこから抜け出したかったヘジン (イム・スンス)が旅程に合流する。カン・ドンウォンは劇中と同じように、撮影現場でもヘジンの兄の役割を担った。
監督は「子役俳優には毎日撮影現場を楽しませることが重要。普通、助監督が子どもの面倒を見るが、今回はカン・ドンウォンがその役割をした。撮影がない時は子どもを面倒見ながら遊んでくれた。最後の撮影の日、カン・ドンウォンは撮影がなかったのに、子どものためにレゴを持って来た」と明かした。
是枝監督は今年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞したパク・チャヌク監督と“神秘的な縁”を強調した。
パク監督が『オールド・ボーイ』で審査委員大賞を受賞した2004年、是枝監督の『誰も知らない』に出演した柳楽優弥が男優主演賞を受賞した。年齢は1962年生まれの是枝監督がパク監督より1歳年上。
是枝監督は先月28日 (現地時間)、フランスのカンヌでパク監督がトロフィーをもらった時、涙をぬぐうような姿がカメラにキャッチされた。パク監督の受賞感想に感動して涙が出たのではないかという言葉も出た。是枝監督はウエットティッシュ一枚を取り出した。
「もちろん受賞の感想に大いに感動したが、涙を流したのではなかった。劇場自体が熱くてタキシードを着ていたので、背中に汗が流れていた。体感温度を3度下げるウエットティッシュで顔を吹いていたが、あいにく受賞の感想とタイミングが合って落ちてしまった。つまらない話をしてすみません」

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