映画『ベイビー・ブローカー』の是枝監督、俳優陣と舞台あいさつ…「ソン・ガンホの登場からシナリオを執筆」

2022年06月27日

「映画の中で、ソン・ガンホさんが初登場するシーンを最初に思い付いて、まずそこだけを書いたんです」
映画『ベイビー・ブローカー』を手掛けた是枝裕和監督は26日、どんな思いでソン・ガンホに“ベイビー・ブローカー”役をオファーしたのかという質問に、このように答えた。
そして、「まだその時はA4で3、4枚のショート・ストーリーだったんですけども」と続け、映画『ベイビー・ブローカー』とソン・ガンホの切っても切れない関係を説明した。
是枝監督は、『ベイビー・ブローカー』の日本公開3日目となる26日、東京の映画館でソン・ガンホ、カン・ドンウォン、イ・ジウン(歌手のIU)、イ・ジュヨンとともに舞台あいさつを行った。
彼は「さかのぼるとたぶん、15年以上前に釜山(プサン)の映画祭で『韓国でもし、映画を撮るなら誰で撮りたいですか』と言われた時にソン・ガンホさんの名前を出させていただいて…」と、ソン・ガンホに対する長年の愛情を示した。
そして「そのインタビューを終えて帰ろうとしてエレベーターを待っていたら、エレベーター(のドア)が開いてソン・ガンホさんがいたんですよね。そのなんか偶然を、何かたぶん縁があるだろうなと思っていたんですけど」と振り返った。
ソン・ガンホは、およそ6年前に是枝監督から釜山映画祭で初めてこの映画のキャスティングに関する話を聞いたとしながら、「(僕は)是枝監督の前作をすべて見たファンでした。尊敬する監督の新しい作品にときめいたし、だからどんな役であってもとても光栄なことだと思いました」と述べた。
是枝監督は「6年前のプロットには、ソン・ガンホさんと、カン・ドンウォンさんと、ペ・ドゥナさん名前は書いていたので…」とし、イ・ジウンとイ・ジュヨンについては、「コロナ禍で、僕が韓国ドラマにハマりまして。そこで見て本当に印象に残った、“うわっ”と思った2人にお声がけをしたという…」と、キャスティングに至った経緯を説明した。
彼は自分を「IUさんの昔からのファンの方には申し訳ない、にわかファン」だと紹介しながら、「一番、僕が幸せだった現場ですね。理想的な、思い描いていた通りのキャスティングが実現してしまいました。すみませんでした」と笑いをさそった。
イ・ジウンは「(是枝)監督が、私の音楽や作品をご覧になる前に、(監督と)偶然、韓国の食堂で会ったことがあります。私は監督のファンでしたが、監督は私を知らなかった時だったので、ごあいさつしたかったけれど、ただ通り過ぎました」と話した。
さらに「監督の映画に私が参加していることや、監督が私の作品や音楽を知っている状況が、どっきりのようで不思議でした」だと述べた。
彼女は自身の配役について、「“ソヨン”を説明する修飾語が非常に多い」とし、「立体的に表現できるよう、監督とたくさん相談し、その地点を考えながら演じました」と振り返った。
ソン・ガンホは、『ベイビー・ブローカー』について、「日本の監督と韓国のキャストが一緒に作ったというのが大事だというよりは、日本人であっても韓国人であっても私たちが生きているこの社会の中の私たちの姿、そして私たちの隣人の姿、また人生の価値が描かれた作品です」とし、「国を越えて誰もが共感できる温かい物語だと思います。皆さんにもその思いを受け取っていただいて共感していただける意味のある時間として記憶されてほしいと願っています」と語った。
是枝監督は「実際に、この映画を作るためにソウルにわたって、かなりベイビー・ボックス(赤ちゃんポスト)の周辺の方たちに取材を重ねたんです」、「取材をすればするほど、この物語が人間の命ということを、どういうふうに考えるべきなのか、それを登場人物たちが悩む話だなと、ちょっとずつ最初に自分が思い描いていた話と変わっていきました」と説明した。
そして、「僕の映画はいつもそうかもしれないが、明快な答えが最後に待っているというよりは、登場人物たちと同じように、見た方たちも旅を続けながら、1人の赤ちゃんの運命というのを一緒に考えていただけたらとうれしいです」と作品に対する思いを明かした。
カン・ドンウォンは、是枝監督を「いつも優しくて、いつも現場で楽しく撮影されていました」としながら、誕生日を1人で過ごそうとしていた監督と一緒に食事をしたエピソードを紹介した。
イ・ジュヨンは、映画を学んでいた大学時代、是枝監督の映画を見に行った一人の学生だったとしながら、「監督が私の作品を見たということ、私を知っているということ自体がとても不思議な経験でした。その事実だけで、とても幸せだし、その幸せな気持ちをもって作品に望めました」と話した。
韓国の主要映画人が、日本を訪問するのは、パンデミック直前の2020年2月に、ソン・ガンホとポン・ジュノ監督が来日して以来、2年4カ月ぶりだ。
同日、舞台あいさつが開かれた映画館にはイベント開始前から多くのファンが押し寄せ、その手には「ハートください」、「IU」、「星を描いてください」など韓国語のメッセージが書かれた紙があった。
イ・ジウンは「(観客席の)ファンの方が泣いてらっしゃいますね」、「とても久しぶりに来て申し訳ない気持ちだし、会いたかったです」と、これまで日本のファンたちに会えなかったことに対する申し訳なさを口にした。
ソン・ガンホは、イ・ジウンが日本に到着した時は空港にファン100人以上が詰めかけていたが、カン・ドンウォンの時は3人しかいなかったとしながら、「僕の時は5人の方が来てくれていました。だから昨日は、一日中、気分が良かったです」と、到着した時の状況を紹介し、会場をどっと笑わせたりもした。
舞台あいさつには、およそ100人の取材陣が集まった。

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