映画『トランス』、尋常ではない独立SFの登場…“トランスヒューマン”を素材に描く
2022年11月11日

学校でいじめに遭うミニョン (ファン・ジョンイン)は同じクラスのイテ (ユン・ギョンホ)から“トランスヒューマン”について聞き、彼が準備してきた“人類進化プロジェクト”に合流する。
ミニョンがプロジェクトに参加した頃、特別な耐性で雷に3度打たれても生き残ったナ・ノチョル (キム・テヨン)が転校してきて、ミニョンをいじめていた集団の中の1人が学校で死亡したまま発見されることが起きる。
犯人と名指しされ大きな混乱に陥ったミニョンは、時間が繰り返し現れる“タイムループ”の中で真実を明かすためのパズルを合わせていく。
映画『トランス (原題:트랜스)』は独立映画にもかかわらず、物語の始まりから尋常ではない。
大衆に馴染みのない概念である“トランスヒューマン”をシナリオに持ち込み、ストーリーの描写、キャラクターの感情の動きに力を抜く代わりに、物語の構造 (プロット)を作るのに焦点を合わせる。
トランスヒューマンとは改造を通じて優れた能力を持つようになった人間のことをいう。作品のなかではいわゆる“電撃洗礼”、高電圧で頭脳神経のパターンをかく乱し、新皮質のネットワークを新たに配置して脳内を電子形態に変形させる仮説に従って由来した概念。
誰かがトランスヒューマンの状態になれば、周りの実状や、“自分”という感覚は消え、まるで絶えず繰り返される時空間を遊泳する錯覚を呼び起こされるようになるという。
「われわれは世の中に実在する現実を見ているのではなく、脳が解釈した現実を見ている」という劇中のイテの言葉のように、作品はまるで脳の中の話を見せるようにキャラクターの“意識の流れ”によって展開される。
映画を演出したト・ネリ監督はマスコミ試写会および記者懇談会で、「ドラマや人間関係、歴史などそのような種類の映画はたくさんある。この映画を企画した時は、(キャラクターの)感情の動きまで消してしまいたかった」とし、「物語の構造、プロットだけ残す乾燥した映画を作りたかった」と製作意図を説明。
「美術でいえばプロットは抽象化だ」というト監督の言葉のように普通の映画のように、ストーリーに沿って没入しようとすると作品の姿がうまく決まらず、難しく受け入れられることもある。それだけに解釈の難易度は作品に接する人々ごとに異なる可能性がある。
この作品は低予算の独立映画にもかかわらず、特殊効果や特殊メイクなどが普通の映画と同じくらい自然に目に付く。作品のなかで人類の進化プロジェクトを構想したイテの実験室は他の研究所に劣らない小道具の数々で飾られた。
2018年に製作されたこの映画は韓国はもちろん、アメリカやヨーロッパ、南米など全世界42の有数ジャンル映画祭に招待され好評を得た。
2001年に短編『茅島 (原題:모도)』で作品演出に乗り出したト監督は独特なナラティブ形式を実験しながらシナリオ作業を続けてきた。ト監督は“人工知能”を素材に次の作品を構想しているという。
