ホン・サンス監督29本目の長編映画『水の中で』、破格的な実験?難解な拙作?
2023年04月04日

1時間余りのランニングタイムの間、スクリーンの中のすべてがぼやけている。人物たちの表情はなかなか読めず、その後ろに広がる済州(チェジュ)の風景ははるかに遠くなる。
ホン・サンス監督の29本目の長編『水の中で(原題:물안에서、英題:In Water)』は、アウトフォーカス(脱焦点)技法を積極的に活用した実験的作品だ。タイトルどおり、まるで水の中で映画を見ているような感じを与える。
作品の長さ自体が61分と、大幅に短くなり、物語の構造もまたさらに単純になった。
『水の中で』は、俳優を夢見ていた“スンモ”(シン・ソクホ)が、映画演出を決心しながら繰り広げられる物語を描いているが、全般的にスンモ個人が持つ芸術家としての内面的葛藤により集中しながら、前作よりも人物間の葛藤を目立たせないようにした。
スンモは、同じ学校出身の“サングク”(ハ・ソングク)と“ナミ”(キム・スンユン)に助けを求め、映画を作るため一緒に済州(チェジュ)島へと向かう。
映画の撮影に使える時間はたったの1週間、制作費はアルバイトで集めた300万ウォン(約30万円)。時間も金も足りないが、スンモはどんな映画を作らなければならないのか依然として分からない。
そんな中、海辺でゴミを拾う女性と偶然出会い、彼女との会話からインスピレーションをもらい、スンモは映画を撮ることができるようになる。
映画制作の話であるだけに、主人公からホン監督の姿を見つけるのは難しくない。
1週間で映画1本を作ろうとしながら、決められた台本もなく、撮影地でストーリーを探して作っていこうとするスンモの制作方法は、ホン・サンスのそれと似ている。
ホン監督は普段、台本なしに、自分と近い映画関係者たちと映画作業をすることで知られている。また、ほとんどの作品撮影を短期間で終えるという。今回の作品の場合、10日間のうちたったの6回の撮影で終わらせたと明かしたりもした。
なぜ、突然映画を作るのかという友人たちの質問に、「名誉が欲しい」というスンモの答えは、映画に対するホン・サンスの観点と態度を考えさせる。
ホン監督は今回の作品でも、起承転結形式で展開される普遍的な映画の公式に従わず、日常が持つ常套性を作品の底辺に敷き、その中でお互いにぶつかる人物の姿を盛り込んできた。
また、登場人物が酒や茶などを飲みながら会話を交わすシーンや、積極的に偶然性を介入させるロングテイク技法、特別な技巧を敷かない平べったい演出方式など、“ホン・サンススタイル”の映画の特徴もそのまま盛り込まれた。
『水の中で』は去る2月、「第73回ベルリン国際映画祭」でエンカウンターズ部門に上り、初披露された。
当時、映画祭側はこの作品について、「ホン監督の作品の中で最も親密で詩的な映画」だと評価しながら、「印象主義の絵画のようにイメージ一つひとつを丁寧に作り出した」と評価していた。
しかし大胆なアウトフォーカス技法の作品など、新しい試みが多少難解に読まれうるだけに、作品に対する大衆の反応は分かれるとみられる。
アメリカの批評サイト「Rotten Tomatoes」での同作品の新鮮度指数(評論家たちの評価点数)は60%で、ホン・サンスの作品の中で最低点を記録した。まだ参加した評論家は5人だけだが、このうち3人は肯定的な評価を出し、2人は否定的なに評価を出した。
好評を残した評論家は、この作品を画家ピカソの絵に比喩しながら、「観客は超越的なミニマリズムの連続に魅了されるだろう」と述べた。
『水の中で』は12日に韓国で公開される。上演時間は61分、年齢制限は12歳以上観覧可だ。
