ドキュメンタリー『The Talent Show』、映画の主人公になったセウォル号の母親たち…「コメディみたいに面白い」

2023年04月12日

「セウォル号の話をすれば悲しい思いをするから避けたいと思う人もいるじゃないですか。この映画はそのようでなかったら幸いです。コメディと同じくらい楽しく愉快でハツラツとしています」(イ・ヨンマンさんの母、イ・ミギョンさん)
ドキュメンタリー『The Talent Show (原題:장기자랑)』の中のセウォル号の被害家族の顔は、これまでメディアで扱われていた姿とはまったく異なる。
この作品はセウォル号の惨事の苦痛を経験した母親たちが所属する、“4・16家族劇団”「黄色いリボン」の話を盛り込んだ。劇中の母親たちはお互いに冗談を言いながら、にっこりと笑ったり、配役に対する欲で葛藤を生じたりもする。
最近、ソウル・鍾路 (チョンノ)区 寿松 (スソン)洞でイ・ソヒョン監督と共に会った出演者のキム・ミョンイムさんとイ・ミギョンさんの姿も、劇中と変わらず明るく情熱的で温かかった。
クァク・スインさんの母、キム・ミョンイムさんは「映画をご覧になり、『私たちと同じ人たちなんだ。隣人のようで家族のような人たちがそのようなことを経験して悲しみ、つらい思いをしているんだな』と感じられるきっかけになれば幸いだ」と述べた。
イ・ソヒョン監督は「これまでのセウォル号に関する映画を観れば、惨事被害者の方々が苦しんで悲しむ姿、または闘争する素敵な姿の2つを見せている」としながら、「その間にある母親たちの姿をお見せしたかった」と演出意図を明かした。
「私たちの母親は素敵な俳優であり、安全社会のために戦う英雄だと思う。皆、素敵で尊敬している。しかし、生まれたときから英雄だったのではなく、本当に平凡だった方々。そんな人々は英雄になっていく部分にもっと集中したようだ」
前作『おばあちゃんの遠い家 (原題:할머니의 먼 집)』(2016)を通じて、自ら人生を終えようとしていた祖母と孫娘である自身の話を盛り込んだイ監督は、7年ぶりに『The Talent Show』を世に出した。
彼女は2019年にNHKで制作するセウォル号のドキュメンタリースタッフとして働きながら、「黄色いリボン」を知ることになったと話した。
イ監督は「ただ一目ぼれをした。ずっとお母さま方に会いたい気持ちが大きくて、あてもなくカメラを買って行った」と、「黄色いリボン」との初めての出会いを思い出した。
始まりは順調ではなかった。イ監督が初めて練習室を訪れた日、一部の団員たちがキャスティングの結果に不満を表出し、対立が激化したためだ。
劇団の代表を務めているキム・ミョンイムさんは、「初めて監督さんに会ったとき、とても不安だった」とし、「お母さんたちは爆発直前であり、この方 (イ監督)は来て眺めていて、どう仲裁すればいいのかハラハラした」と振り返った。
しかしイ監督はむしろ、「セウォル号に対する本当に別の話を作れると思いついた」と、ドキュメンタリー制作に確信を持つようになったと述べた。
彼女は直々に長文の直筆の手紙を書いて伝え、ドキュメンタリーの方向性を説明する時間まで持ちながら、団員たちの気持ちを得始めた。本格的な撮影前に、4・16セウォル号惨事家族協議会から許可ももらった。
「その当時は、お母さんたちが盗聴されることも多く、人を簡単に信じられない状況だった。これ (映画)のためにまたそんな気分になってはだめだと思った」
イ・ミギョンさんは、「いつも慎重にお母さんたちを配慮する姿から率直さが感じられた」としながら、「諦めず撮ってくださり本当にありがたい」と気持ちを伝えた。
「最初は他のドキュメンタリーのようにセウォル号の惨事を知らせ、家族たちが闘争する姿を見せるためだと思った。でもそれを抜け出して一人ひとりを主人公に描いてくださった。こんなに面白くてよい映画になるとは思わなかった (笑)」
『The Talent Show』の中の母親たちの姿が惨事被害者というフレームの外に存在することができたのには、イ・ミギョンさんと、チョン・イェジンさんの母、パク・ユシンさんが主人公の座を巡って繰り広げる葛藤が大きな役割を果たした。
2人は映画の中でお互いに対する否定的な考えを見せるエンターテインメントと状況に対する不満を率直に打ち明ける。葛藤の末にパク・ユシンさんが突然姿を消し、劇団が危機を迎えた状況もそのまま盛り込まれた。
イ監督は「中でずっと欲望がうごめく部分が私には非常に躍動感があり、かわいく感じられた」としながら、「劇団を収めるためにはこの話をしなければならないという気がした」と述べた。
イ・ミギョンさんは「人それぞれ、皆各自の性格や個性があるが、私はただすごく率直な人。他人が私をどう見ても、私なりに楽しんで最善を尽くすのが重要だ」と、ドキュメンタリーの中の自分の姿に満足していると述べた。
『The Talent Show』は4月5日から、韓国全国の劇場で上映されている。
キム・ミョンイムさんは「私たちが演劇で会うことができる人は限られているが、映画ははるかに多くの人に会えてわくわくしている」としながら、「多くの方にご覧になってほしい」と公開への感想を明らかにした。
イ・ミギョンさんも「お母さんたちを通じて、きれいできらびやかで夢が多かった子どもたちにまた会える機会となればと思う」という願いを伝えた。
「たぶん映画をご覧になれば、有名な俳優たちに劣らないお母さんたちの魅力にすっかりはまると思う (笑) もうすぐ4月16日。この映画を通じて少し違う気持ちでまたセウォル号を振り返る時間になれば幸いだ」

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