映画『密輸』のリュ・スンワン監督、「女性が主人公だが、女性が強調されすぎることは避けたかった」

2023年07月20日

キム・ヘス、ヨム・ジョンア主演で、リュ・スンワン監督の新作映画『密輸(原題:밀수)』が、今月26日の劇場公開を控え、マスコミに公開された。18日、ソウル・龍山(ヨンサン)区で行われた試写会では、客席のあちこちから笑いが飛び出すなど、明るい雰囲気が続いた。

今作は、千万観客を達成した『ベテラン』や『ベルリンファイル』、『生き残るための3つの取引』など、主にアクション映画を演出してきたリュ・スンワン監督が、初めて水中アクションに挑戦した作品だ。映画の素材が「密輸」であるため、 『10人の泥棒たち』のようなケイパームービーで、物語の背景が海だと考えればよい。

リュ監督は、この映画を選んだ重要な理由に、水中で繰り広げられるアクションを具現することができるという点だったと述べた。これまで格闘シーンをたくさん撮ってきたが、いくらワイヤーやトランポリンのような装備を使っても重力がある中での動きには限界があるという説明も添えた。

「水平な動きではなく上下左右、垂直動作まで動線を大きくできるのは水中だけだと思った。以前、作った映画『血も涙もなく』のように男女が肉薄戦を繰り広げると壮絶にならざるを得ないが、海女という職業を持つ人々が自分に有利な水の中でアクションを繰り広げると、とても軽快で新しいリズムのシーンが誕生するだろうと思った」

しかし、実際の撮影は甘くなかった。

「アメリカに行った時、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズを制作したJerry Bruckheimer氏と会った。次の映画が、水中での物語だから、撮影のコツを教えてほしいと頼んだところ、“(水中撮影は)やめたほうがいい”と言われた。今、仮に同僚や後輩監督に同じことを聞かれたら“あの時のJerry Bruckheimer氏の言葉は間違ってなかった。やめたほうがいい”と言うだろう」

天気のゆえに海で撮影できる日はめったになく、絶え間なく動く水の特性上、予測も難しかった。揺れる船の上にいなければならなかった俳優たちも、体力的に大変だったという。キム・ヘス、ヨム・ジョンアの2人は、船を降りてから寝ようと横になっても地が動くような「陸地での乗り物酔い」を経験したという。

この作品が期待を集める理由は、今夏に劇場で公開される韓国大作の中で唯一の女性の物語であり、リュ監督が20以上ぶりに演出する女性ツートップ映画だという点だ。キム・ヘスが、女優生活38年の中で「最も上品な役」だと言う密輸人“チョ・チュンジャ”を担い、彼女が気に食わないが相棒になった海女“オム・ジンスク”役はヨム・ジョンアが演じる。

リュ監督は、先月行われた制作報告会や映画専門誌のインタビューで「女性が主人公だが、女性が強調されすぎることは避けたかった」、「女性の物語だと限定するには、この映画の抱える範囲が広すぎる」と話した。どういう意味だろうか。

「このような大衆映画で、女性のキャラクターを消費する方法はある。しかし、性的魅力をアピールする描写や性的視線で見るようなものを最大限避けようとした。女性だからといって、特別な何かがあるわけではなく、ただアイデンティティが女性というだけだ。主人公たちが、誰かの母や娘、妻として映らない。完全に個人であることを望んだ」

主演俳優たちの考えはどうなのだろうか。 キム・ヘスは、インタビュー中、リュ監督の発言に笑顔で「ウソだ」と冗談を言いながらも、「本当に女性中心の物語だ。それにも関わらず、女性中心の物語に限定されなかった点や、それぞれのキャラクターが(台本でも)すごく立体的に描かれているのに、実際に演じられるとさらに豊かになり躍動感が生まれる点、そしてそれぞれの役をこなす俳優の相乗効果が本当によかった」と語った。

別の日に会ったヨム・ジョンアもリュ監督と似た表現を使った。

「女性らしさを取り除いた。お母さんの感じはない。久しぶりにそのような役をしたし、少し中性的な魅力もある。髪型も、着る服も。これまで見せていなかった姿なので、そこに魅力を感じていただけたら本当にうれしい」

ヨム・ジョンアの“ジンスク”は、「決断力があり、責任感が強く、周りの人の面倒をよく見る器が大きい人」、「リーダーとしての素質をたくさん備えた人」だ。そんなジンスクが「壮大な海を守る灯台のような存在」だとするなら、チュンジャは、「ない道を作っていく人」。 2人の俳優が、それぞれ説明した自身のキャラクターの描写だ。

担ったキャラクターの性格も、俳優としての演技スタイルも全く違う2人が、劇をリードするとするなら、「助演」と言うには相当な分量を演じたキャラクターたちが、物語の密度を高める。チュンジャとジンスクを助ける喫茶店マダムの“オク・ブン”(コ・ミンシ)、全国の密輸王“クォン上司”'(チョ・インソン)、彼らを捕まえようとする税関の係長“イ・ジャンチュン”(キム・ジョンス)らだ。

そして「助演」の中で、最も深い印象を残すのは断然、マヌケな青年から強烈な悪役に変身する“チャン・ドリ”役のパク・ジョンミンだ。リュ監督がシナリオの執筆段階から、あらかじめ選曲していたという70年代の音楽も、キャラクターに劣らず重要な役割を果たす。 全盛期の香港映画を連想させる格闘シーンでサヌイリムの歌が流れる部分が代表的だ。

映画は、涼しい夏の映画を求めている人や、リュ・スンワン監督と俳優たちのファンなら楽しく見ることができる要素が多い。今夏の韓国大作映画の中で最初に公開される『密輸』の興行成績は、果たしてどうなるのだろうか。

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