ジャンルを変奏するイ・ビョンホンの力…映画『コンクリートユートピア』

2023年08月02日

日差しが降り注ぐ平和なソウルの都心に鈍い音が響く。
続けて片側の土地が隆起し、道路と家が上下に揺れる。波乗りでもするかのような激しい地震は、都市を破壊する。市民たちは突然の災害を避けようと逃げるが、大自然の前では力なく倒れるしかない。
オム・テファ監督の映画『コンクリートユートピア(原題:콘크리트 유토피아)』は、典型的な災難ものとして始まる。しかし災難が起きる状況ではなく、災難の後の社会の姿を描くのに焦点を合わせたという点で、他の災難映画とは差がある。ジャンルもまたブラックコメディーからホラーに、そして悲劇へと絶えず変化していく。
その中心には俳優のイ・ビョンホンがいる。彼は、廃墟となったソウルで唯一、残った“ファングンマンション”の新住人代表の“ヨンタク”を演じた。平凡な隣のおじさんが次第におかしくなっていく過程を見せながら、映画のジャンルは自然と変奏する。しっかりした脚本と滑らかな演出のおかげもあるが、イ・ビョンホンの優れた演技がストーリーに蓋然性と自然さを加えてくれる。
恥ずかしがり屋で人前になかなか出られないヨンタクは、最初はリーダーとは程遠い人物として描写される。彼が住人代表になったのは、ただ“犠牲精神”のためだ。地震が発生してまもなく、ある家に火事が起こると、彼は一人で飛び込んで火を消す。このことがきっかけで婦人会会長の“クメ”(キム・ソニョン)が、ヨンタクを新代表に推薦したため、思いもかけず代表になったのだ。
ヨンタクは、任期初期の民主主義の基本的な規則に従い、住民たちを導く。マンションに避難した部外者たちを、多数決で外に追い出す。先頭に立って武器を振り回す将軍のような姿も見られる。若い公務員“ミンソン”(パク・ソジュン)は、彼に積極的に従い始める。防犯隊員となって、危険も辞さず外へ生活必需品を買いに行ったり、外部侵入者からマンションを守ったりする。
ファングンマンションに、新たに規則ができる。変わらない第一原則は、「マンションは住民のもの」ということだ。このマンションに住んでいた人だけがここに住み続けることができる。マンション周辺を壁で囲んだ住民たちは、外部の者を“ゴキブリ”と呼び排斥する。その過程で血を見るのもいとわない。もちろんこれの先頭に立つのはヨンタクだ。
しかし一部の住民は、これが果たして正しい行動なのか疑問を抱きはじめ、外部の者を密かに自分の家に入れたり、これを見ても目をつむる人が出てきたりする。ミンソンの妻である“ミョンファ”(パク・ボヨン)もそのうちの一人だ。
いずれにせよ、住民たちは共に暮らしながら少しの間、安穏を享受する。ヨンタクの指示に従い、働いた分だけ配給を受けて何とか生きていく。しかし生活必需品は次第に底をつき、何人かは配給量に不満を感じ始め、いつしかマンションには見えない亀裂が生じる。
ずっと謎に包まれていたヨンタクの本当の正体が明らかになる後半部に、サスペンスは絶頂に達する。イ・ビョンホンは文字通り、目が回るような演技で観客を圧倒する。この時、ジャンルは再びスリラーとホラーものに変わる。
しかし『コンクリートユートピア』は、ジャンル的面白さだけに没頭するわけではない。人間が生存のために守らなければならない最小限の“善”は何なのか、何が人間らしい社会なのかを問う。同じマンションに住んでいるが、それぞれ倫理の基準が違う人々が、どのように災難後を克服していくのかを見せながら、観客を考えさせる。
実際の災難現場を彷彿させる映像は、没入感を極大化する。視覚特殊効果(VFX)を活用し、都市があっという間に崩れ落ちる過程と、その後戦場のように変わってしまったソウルの姿を生々しく具現化した。ファングンマンションのセットは、新しくマンションを建てるほどのレベルで作られた。掲示板が張られた各種広告物や小さい文字など、ディティールにまで気を使った。
この映画は、ディストピアの世界観を主に披露するキム・スンニョン作家のウェブトゥーン「愉快ないじめ」の2部「愉快な隣人」を原作にした。そのため今夏の劇場街で上映される韓国大作4本の中で、最も重い雰囲気を醸し出す。時々、頭の中を複雑にしたりもする。
オム監督は、7月31日にソウルのロッテシネマ・ワールドタワーで開かれた試写会後の記者懇談会で、「韓国に突然こんな災難が起きたら、どんなことが起きるのだろうという考えから出発した映画だ」としながら、「正確な答えを出すことはできないが、共に生きていく方法を探さなければならないのではということを投げたかった」と述べた。
映画『コンクリートユートピア』は、8月9日に韓国で公開される。上映時間は130分、年齢制限は15歳以上観覧可だ。

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