スリラー映画『コメント部隊』、サイバー空間の見えない手
2024年03月18日

今日、社会を動かす世論の中心はもはやマスコミではなく、SNSやオンラインコミュニティのようなサイバー空間だという。
このようなところで作られたフェイクニュースが社会を混乱に陥れたりもする。
アン・グクジン監督の新作『コメント部隊(原題:댓글부대)』は、われわれ社会の世論が形成されるサイバー空間を誰かが支配しているかもしれないという強烈な疑いを提起する犯罪スリラー映画だ。
昌慶(チャンギョン)日報という名前の新聞社の社会部記者サンジン(ソン・ソック)が、公共機関の入札事業を取材していたところ、大企業の不正を暴露する記事を書き話が始まる。
サンジンは、スクープ記事になりそうだった彼の記事が事実ではないことを示す写真がオンラインコミュニティに出回り、一夜にして誤報を出した記者に追い込まれ、懲戒を受ける。SNSには彼を“マスゴミ”と皮肉るコメントがあふれる。
名誉を挽回しようと血眼になったサンジンに謎の情報提供者が接近する。「チャッタッカ」というオンラインIDで呼ばれるこの男性(キム・ドンフィ)は、サンジンの記事が誤報ではなく、「チームアレフ」という名前を持つコメント部隊の工作だとし、その実態を知らせるので、記事を書いてほしいと提案する。
記者が主人公の映画と言えば、正義感に満ちた記者が巨大な不義の勢力に対抗して、真実を暴く話を想像しやすいが、『コメント部隊』はそのような予想を破る。
サンジンというキャラクターがそうだ。彼は正義感よりは共鳴心に満ちた人物で、普通の人が見るヒーローではない。
サンジンは共鳴心を満足させようと特ダネを渇望し、突然“マスゴミ”として追い詰められてからは、何とか名誉を取り戻そうともがく。しかしまるでクモの巣にかかった昆虫のように、彼がもがくほど、さらに深く巨大な陰謀に巻き込まれる。
観客は映画を全部見てからも真実が何なのか分からない。「100%の真実より真実が混じった偽りのほうが真実のようだ」というセリフのように、映画は真実と偽りの境界が曖昧なミステリーを観客の前に出す。
この点はサイバー空間を支配する“未知の力”に対する恐怖を極大化する。観客はそれが何なのか、結局分からないが、正体不明のその何かに対してぞっとする感じを抱いて劇場を出ることになる。
話を導くソン・ソックの演技が際立つ。彼は利己的で冷笑的でありながらも、何かにとりつかれたように迷宮入りするサンジンというキャラクターをスクリーンで再現してみせた。
「トームアレフ」のメンバーである“チャッタッカ”、“チンパッキン”、“パプタック”役を演じるキム・ドンフィ、キム・ソンチョル、ホン・ギョンの演技の組み合わせも自然だ。彼らは匿名のサイバー空間に埋没し、他人の苦痛に対する共感と自己省察の能力を失ってしまった人たちの姿を見せる。
映画は、急速に展開するSNS画面とオンラインコミュニティで歩き回るイメージである“ミーム”の映像で予測不可能なサイバー空間を描き出す。
チャン・ガンミョン作家の同名小説を原作とした。原作のしっかりした話を基にしたおかげか、映画も緊張感が崩れない感じだ。
アン監督が長編デビュー作『誠実な国のアリス』(2015)以来、9年ぶりに出した作品だ。
『誠実な国のアリス』でアン監督は夢多き若い女性の人生が、壊れる話を感覚的に描き出しながら、韓国社会の暗い面にスポットを当てた。ヒットには至らなかったが、作品性を認められ、アン監督は忠武路(チュンムロ/映画の街として知られる)の次世代監督として注目された。
リアルなスタイルの『コメント部隊』はファンタジー要素を持った『誠実な国のアリス』と感じがまったく違うが、鋭い社会的問題意識を抱いているという点で延長線にある。
アン監督は『コメント部隊』について、「面白い陰謀論でいっぱいのインターネットの投稿のような映画だ」とし、「これまでになかった方法で、(話を)解きほぐすことができると思う」と述べた。
映画『コメント部隊』は27日に韓国で公開され、上映時間は109分、年齢制限は15歳以上観覧可だ。
