イ・ジェフン主演映画『脱走』…夢に向かって疾走すれば地雷畑も怖くない

2024年06月19日

ハリウッドの名作に挙げられる映画『ショーシャンクの空に』(1994)は、濡れ衣を着せられて刑務所に行ったアンディ(ティム・ロビンス)が必死にそこから脱出する物語だ。 『ショーシャンクの空に』が多くの人に、名作として残ったのは、単純な脱獄の話にとどまらないからだ。 観客は、アンディが抜け出そうとしていたショーシャンク刑務所は、もしかしたら私たちの日常を描写しているのかもしれないということに考えが及び、自由に対するアンディのもがきがより印象深く残る。
イ・ジョンピル監督の新作『脱走(原題:탈주)』も、北朝鮮の軍人が南に亡命する物語として観客にアプローチし、深い響きを生む。 主人公のギュナム(イ・ジェフン)は、南北が対峙する非武装地帯の北朝鮮軍最前線部隊の軍人だ。10年にもなる軍服務期間も残りわずかとなったところで、彼の気持ちは、除隊後に戻る北朝鮮の社会より、非武装地帯の向こう側に向く。 韓国への亡命を緻密に準備していたギュナムは、同じ部隊の兵士ドンヒョク(ホン・サビン)が、先に亡命を試みたことが発覚しながら共謀者として追い込まれる。 この事件の調査のために保衛部から派遣された将校ヒョンサン(ク・ギョファン)は、昔の縁で、ドンヒョクを危機から救うが、亡命に向けたドンヒョクの熱望は変わらなかった。
地雷に満ちた非武装地帯を命がけで横切るギュナムと彼を執拗に追撃するヒョンサンを中心にした『脱走』は、ギュナムの全力疾走と同じくらいスピード感を持って話を展開していく。 ギュナムの不幸な過去を見せる場面が代表的だ。ギュナムが寝ずの番をしていた時に、南側から聞こえてきたラジオ音楽番組でZion.Tの「Yanghwa BRDG」が流れると、彼の過去が1本のMVのように圧縮的に繰り広げられる。 ギュナムの亡命過程で発生する銃撃戦とカーチェイス戦も見どころだ。非武装地帯を空間的背景にするという設定に合わせて、広々とした草原と森、山と丘で素早いアクションが展開され、爽快な感じを与える。
『脱走』は、北朝鮮軍と非武装地帯をリアルに描写するよりは、多少現実と違っても、果敢で個性的なスタイルの映像を繰り広げることに集中する。これにより、映画の中の時空間と事件は、現実的脈絡から外れた幻想の感じを帯びる。 これは、『脱走』が南北分断の現実やイデオロギー対決に関する映画ではないという点と無関係ではない。この映画は、『ショーシャンクの空に』のように刑務所のような現実に、自らを閉じ込められて生きていく全ての人に向けた物語だ。
夢のためなら、現在所有している全てのもの、ひいては人生そのものまでも懸けられるギュナムと、安穏な現実のために夢を諦めたヒョンサンが、明らかな対照をなし、強烈な余韻を残す。 この映画のメッセージは、まだ夢を諦めない全ての観客、特に若い観客の深い共感を引き出す。
ギュナム役のイ・ジェフンは、息が切れるような全力疾走をするだけでなく、泥沼に体を投げるなどの渾身の演技を繰り広げる。ヒョンサンを演じたク・ギョファンは、作品にミステリーとユーモアを吹き込む。
『脱走』を演出したイ監督は、大企業に反旗を翻した高卒女性社員たちの話『サムジンカンパニー1995』(2020)を手掛けた。与えられた現実の障壁を越える人の話という点で、2つの作品は共通点がある。 イ監督は、『脱走』について、「単純に亡命兵士の脱北記ではない。主人公はアフリカの青年かもしれないし、大韓民国に住む私たちかもしれない」とし、「運命のように決まった世の中から離脱して自分だけの道を行こうとする人間の物語だ」と述べた。
映画『脱走』は7月3日に韓国で公開され、上映時間は94分、年齢制限は12歳以上観覧可だ。

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