"大器晩成型"味わい深い演技力の持ち主、俳優ソン・ドンイルのキャリアを探る

2019年12月11日

どんな役でも自分だけの色で味わい深く表現する俳優のソン・ドンイルにとって、今年は新しいジャンルに挑戦し役者としての活躍の幅を広げた年となった。
今年8月に公開された映画『変身(原題:변신)』で、彼は演技人生で初めてホラー作品に挑み、話題を呼んだ。
この作品は家族の姿に変身した悪魔によって奇異な出来事が起こる過程を描いている。
ベテラン俳優がなぜ今になってホラージャンルを選んだのだろうか。
ソン・ドンイルは「ありがちなオカルト映画や単なるミステリーだと思ってシナリオをもらったが、意外にも温かい家族の物語だった。なので、家族の話といえば私じゃないかなと…」と説明した。
劇中の不気味な演技が印象的だが、ホラー演技に対する難しさはなかったのだろうか。
彼は「ただシナリオに書いてある通りに演じても、まったく問題ないと思った。これまであったどのホラー映画や極限スリラーよりも、まったく違う、最も韓国的な家族の物語が描かれている」と語った。
現在は「安心して見ることができる俳優」として認められているが、実は長い無名生活を送ってきた。
ソン・ドンイルは舞台俳優として活動していた1991年に、ある放送局の公開採用タレントとしてデビューした。
当時はチャン・ドンゴンやイ・ビョンホンと共に「3大放送局の有望株」として注目されたが、作品にキャスティングされた後は困難が多かったという。
ソン·ドンイルは「舞台に立っていた時は私も自信があった。角張った顔の俳優でもないしうまくいくと思っていた。発声の仕方が演劇のトーンだった」と振り返る。
その後、同年代の俳優たちが主演を務め人気になる中、ソン・ドンイルは脇役に留まった。
そんな彼に運命のような作品が訪れた。1998年に放送されたドラマで、味のある方言を使う田舎の青年役で注目され始めたのである。
この作品には数回登場する程度の脇役で、もともとセリフも標準語だった。『どうせ3、4話しか出ないなら、自分の好き勝手に演じてしまおう』と方言を使ってみたそうだ。脚本家の先生が全州(チョンジュ)の出身だったらしく、「故郷の言葉を聞いて懐かしかったのか、助監督から『お前また出るぞ』と何度も呼ばれることになった」と明かしてくれた。
さらに劇中用いていた「赤い靴下」が大衆に受け、そのキャラクターが大人気になると、その勢いでトロットアルバムまで発表することになった。
その後、ソン・ドンイルは映画とドラマを行き来しながら、独自の卓越したキャラクターを生み出してきた。
そして彼にとって代表作となる2010年のKBSドラマ「チュノ~推奴~」に出会うことになる。
ソン・ドンイルは卑劣な推奴師のチョン・ジホ役を完ぺきに演じて好評を博した。
役作りの黒い歯を維持するため、メイクをするたびに歯を黒く塗りつぶして撮影に臨んだそうだ。
彼は「マニキュアのような形をしていて、毎回塗っても、ご飯を食べたり時間が経つと消えてしまう…」と番組で明かしていた。
そのような涙ぐましい努力のおかげで、同年のKBS演技大賞では男性助演賞を受賞し、俳優として第二の跳躍を遂げることになる。
その後、ヒロインの父親役を通じて、少し無愛想だが家族には優しい役柄から、"国民的なパパ"という代名詞もつけられた。
何よりソン・ドンイルの魅力がさらに輝いたのは、ほかならぬバラエティ番組だった。
2013年に実の子どもとともに育児バラエティ番組に出演し、その気さくな人柄で大衆に愛された。
家からテレビをなくして会話する時間を設けてきたが、子どもたちが成長するにつれて大変なこともあるようだ。
小学5年生になって敏感になったという次女。「娘だから全てが難しい。私の子どもでも…」と頭を抱える場面も。
ちなみにもし娘に彼氏ができたら「公務員のように真面目な人」が理想のようで、「真面目さほど大きな武器はない」とその心を明かした。
そう語るソン・ドンイルの誠実さや、飾らずに率直な演技をする彼をロールモデルに選ぶ後輩俳優たちは実に多い。
映画『探偵』シリーズで共演したクォン·サンウは「ドンイル先輩は本当に例え方, 隠喩法が素晴らしい。決して同じことを二度言わない」としながら「まるでトランクの中に古書があるようだ」と称賛を惜しまない。
後輩たちの面倒をよく見る先輩としても有名だ。
女優のキム·ユジョンは「ソン·ドンイル先輩は少年のような心で私とは友人のように接してくれて、本当にリラックスできたし、ありがたい気持ちで撮影できた」と語っている。
名前のない端役から始まり今年は主演を務めた映画で新しい顔を見せてくれたソン・ドンイル。彼こそが真の"大器晩成型"の俳優だろう。
持ち前の人の心を動かす演技を末永く見ることができるよう多くの期待が寄せられている。

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