映画『始動』 やり直せる青春、成長の物語

2019年12月12日

冬の劇場街に挑戦状をつきつけた映画『始動(原題:시동)』。家を出た若者が、新しい世界に触れながら繰り広げる物語を描いた映画だ。
学校も嫌、家も嫌で、やりたいこともなく、なりたいものもない中途半端な反抗児“テギル”(パク・ジョンミン)は、元バレーボール選手の母親(ヨム・ジョンア)にスパイクで殴られる毎日だ。高卒認定試験の塾に通い、大学に行けという母親の小言から逃げ、当てもなく群山(クンサン)に来た彼は、偶然“長風(チャンプン)飯店”という中華料理店を見つけ入る。
そこで正体不明の料理長“ゴソク兄さん”(マ・ドンソク)に会う。最初から強烈な印象を残すゴソク兄さんをはじめ、長風飯店の“コン社長”、家出少女の“キョンジュ”らとの出会いを通して、厳しい現実世界を知っていく。
テギルの友達“サンピル”(チョン・ヘイン)は、早く社会に出てお金を稼ぎたいと思っている。毎晩文句を言いながら働く祖母にこれ以上苦労はかけたくない。そこで彼は、サラ金業に飛び込む。最初は順調なように見えたが、サンピルが仕事を始めようとする時、予想もしていなかった困難に見舞われる。
映画は、大人になったばかりの、今まさに自分の人生を歩み始めようとする若者の成長の話だ。
彼らがエンジンをかけ出発したとしても、その目的地が常に合っているとは限らない。青春は試行錯誤、目的地変更を繰り返しながら、最初の場所に戻って来たりもする。テギルとサンピルのように、あてもなく始動をかけてみたが、間違った道に入ってしまった若者の姿が頭をよぎる。
そして彼らは時に無謀だ。テギルは、母親にもゴソク兄さんにも負けないようにと反抗するが、その付けは結局自分自身に回ってくる。サンピルもサラ金が何なのかよく分からないまま仕事を始める。喧嘩をふっかけ、けがをしたりもする。
同作品はコメディ映画として宣伝されたが、実際笑いの割合はそれほど多くない。序盤にテギルとゴソク兄さんが出会い、いざこざが起きるシーンでのセリフが笑いを誘う程度で、ヒューマンドラマに近い。特に後半のテギルと母親“チョンへ”の葛藤が終わるシーンや、ゴソク兄さんが自身の過去と向き合うシーンは、前半のコメディタッチな印象が消えるほど真剣だ。
電子コミック原作だからか、各キャラクターに躍動感があるものもこの映画の魅力だ。特にマ・ドンソク演じるゴソク兄さんは、映画に不可欠だ。映画公開前からおかっぱ頭にピンクのTシャツを着た彼の姿が話題になったが、実際に映画で見るゴソク兄さんの魅力は、それ以上である。とんでもない力で容赦なく拳を飛ばすが、TVにガールズグループTWICEが出ると「Knock Knock」を一緒になって踊る彼は、圧倒的な存在感を誇る。
各キャラクターの特徴は明確だが、映画を牽引する中心のストーリーは曖昧だ。特に中盤以降は、様々なエピソードが同時に進行されて混乱することもある。ここに単親家庭、撤去と再開発、家出少年、未成年者売春などの重い素材を少しずつ積み上げながら、プロットはさらに複雑になっていく。突然登場する暴力団間の勢力争いに唐突な印象を受ける。このため結末も突然訪れ、映画は終わりを迎える。

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