映画『天文』の監督ホ・ジノ 「世宗とチャン・ヨンシル、思美人曲のように切なかったのでは」
2019年12月23日

世宗とチャン・ヨンシル、朝鮮王朝時代の二人の天才の物語を描いた映画『天文:天に問う(原題:천문:하늘에 묻는다)』は、ホ・ジノ監督色が鮮明に表れている作品だ。
細かい演出で人物の感情を一つ一つ描き出す彼の得意技が凝縮されている。時代に逆らう二人の男の厚い友情が夜空の星のようにスクリーンで光を放つ。
映画は、世宗(ハン・ソッキュ)が、官奴だったチャン・ヨンシル(チェ・ミンシク)を解放した後、20年間を共にしながら、朝鮮王朝の空と時間を観測できる天文機器などを作る過程を描く。
今月26日に公開を控えた同作品の監督ホ・ジノに鍾路区(チョンノグ)三清洞(サムチョンドン)で会った。彼は「物語のきっかけは、なぜチャン・ヨンシルは歴史の中で突然消えたのだろう。どんな過ちを犯しても臣下を捨てたりしなかった世宗が、なぜチャン・ヨンシルは捨てたのだろうという好奇心だった」としながら「多くの資料調査を経て、映画的想像力で歴史の隙間を埋めていった」と述べた。実際のチャン・ヨンシルは、彼が管理監督した「安輿(王が乗る輿)」が壊れた事件をきっかけに歴史の中から消える。
劇中、世宗とチャン・ヨンシルの関係は「君臣ロマンス」という言葉が出るほど温かく、密に描かれている。
ホ監督は、世宗に向けられるチャン・ヨンシルの心について「鄭澈(チョンチョル/李朝中期の文臣,歌人)の思美人曲(歌集《松江歌辞》に収めれれている歌辞)のように切ないものだったのではないか。いつか独り立ちする国を夢見た世宗もやはり、自分の夢を実現してくれたチャン・ヨンシルを友達として置いておきたかったことだろう」と述べた。
ホ監督は、最初からチェ・ミンシクとハン・ソッキュの主演を念頭に置いていた。 「それぞれの配役は、二人の俳優が長い間悩んだ末に、自分たちで決定した。撮影現場でチェ・ミンシクさんは、気持ちを外に出すタイプであり、ハン・ソッキュさんは中に溜めるタイプだったので、演じ方がとても違っていた。そんな演技スタイルが世宗の冷徹さ、チャン・ヨンシルの天才的な情熱にそれぞれぴったり合っていた」
ホ監督は「映画を撮影していると俳優間で険悪なムードが漂うこともあるが、二人の間にはそのようなものが全くなかった」と振り返った。
また、俳優たちがキャラクターを掴むことができるよう、信じ、任せた。アイデアもたくさん受け入れた。世宗とチャン・ヨンシルが勤政殿の前で一緒に寝ころび星を見るシーンは、ハン・ソッキュが提案したシーンだ。もともとは二人で歩きながら空を見るという設定だったと明かした。
彼は「王が横になるのは斬新なアイデアだったが、世宗のチャン・ヨンシルに対する視線を表現することができ、とても良いアイデアだった」と振り返った。
雨の降る日、チャン・ヨンシルが世宗の寝殿(王が就寝する部屋)の障子に泥を塗り、穴をあけて、様々な星座を作るシーンでも、二人は意見を加えた。 「白い障子に穴を開けると、光がうまく入ってこなかった。チャン・ヨンシルの天才ぶりを表現しようと、泥を塗るというアイデアを出した」と明かした。
ホ監督は、3年前の『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』に続き、再び時代劇を選んだことについて「時代劇ならではの不便さはあるが、歴史が持つ力を感じることができる」と語った。
彼にはまだ「メロ職人」という修飾語が付いて回る。デビュー作『八月のクリスマス』(1998)や、「ラーメン食べていきますか?」 「どうやったら愛が変わるの?」などの名セリフを残した『春の日は過ぎゆく』(2001)が未だに「メロの名作」として挙げられるからだ。
ホ監督は「20年以上も前の作品なのに、まだそのような話が出てくるのをみると、本当に私が作った映画かな?という気がする」とし「今でも覚えてくれていることがありがたく、不思議だ」と笑った。
その一方で「創作する者の立場としては、過去の作品よりは、どうしても次の作品をまず先に考えるようになる」と述べた。
「実は、監督たちは自分が作った映画をあまり見ない。3年前、ある映画祭で『八月のクリスマス』が上映されると聞いて息子と一緒に見に行ったが、集中することができなかった。その映画でハン・ソッキュが床に横になって外を眺めるシーンがあるが、外の洗濯紐に洗濯物がたくさんかかっている。当時、編集する際に、そのシーンを見ながら後悔したのだが、3年前に見た時もやはり洗濯物が多いと思った。監督が自分の作品の欠陥ばかりを見てしまうのは仕方ないことのように思う。笑」
