ハリウッド映画やドラマの中の“韓国”変遷史、ポン・ジュノ監督の『パラサイト』フィーバーのその背景
2020年01月20日

最近の映画界の話題といえば、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族(以下、パラサイト)』が「第92回アカデミー賞」で「作品賞」など、6部門に韓国映画で初めてノミネートされたことだろう。
ハリウッド俳優の出演や英語圏での作品が最重要視されていた世界の映画市場の中で、変化した韓国と韓国の文化の地位を示す大きな事件だ。
『パラサイト』は「第72回カンヌ国際映画祭」でパルム・ドールを受賞したのに続き、今回のアカデミー賞で6部門の候補に選定された。
ポン・ジュノ監督が「第77回ゴールデングローブ賞」で外国語映画賞を受賞した時の感想が「字幕の壁を乗り越えろ」だった。
アカデミー賞の6部門の候補に選ばれた後には喜びながら「その壁はもう破られていたようだ」とした上で、「このような状況は滅多にないので韓国映画産業やアジア映画の歴史において非常に貴重な、珍しいことが起こったのは事実だ」と胸を張った。
こうした快挙はポン・ジュノ監督の才能もあるが、これまで変化してきた韓国の地位も大きく影響しているという。
ヨーロッパとは異なりアメリカのアカデミー賞は興行性も大いに考慮される映画祭だ。
『パラサイト』はアメリカのドラマでリメイクされることが決定したが、これは“韓国に馴染みがあるが、馴染みはあっても妙に違う面白さがある”という意味だ。
実に隔世の感を覚えるニュースである。
2000年序盤でも韓国といえば、西洋では北朝鮮を先に思い浮かべていた。
主役のジェームズ・ボンドが北朝鮮と戦う設定の2002年「007 ダイ・アナザー・デイ」が代表的な例だ。
劇中意味が分からない北朝鮮の言葉が登場し、お寺のような場所が背景に出てきたため、韓国での公開当時、論議が巻き起こった。
マーベルスタジオによる2018年の映画『ブラックパンサー』では釜山(プサン)の市場が舞台となった。
市場で働く女性にナキア(ルピタ・ニョンゴ)がオコエ(ダナイ・グリラ)らを「ナイロビから来た友達。金持ちでいい方だ」と紹介するシーンがあるが、韓国の観客ですら、アフリカの仮想王国ワカンダ出身ナキアより、その釜山の女性によるセリフを字幕なしで聞き取るのが難しい状況だった。
けれども段々と韓国の人々が考える、韓国と似たイメージが現れ始めている。
『パラサイト』の前にアメリカで最もヒットしたゾンビを題材にした『新感染 ファイナル・エクスプレス』は、現在も現地のストリーミングメディア「Netflix」でよく見られている韓国映画だ。
そのゾンビを題材にしたアメリカのドラマ「ブラック・サマー: Zネーション外伝」(2019)に、韓国人女性が主要人物として登場する。
英語を一言も話せないこの女性は、セリフがすべて韓国語だ。
また、カナダではトロントでコンビニを経営する韓国系カナダ人のキムさん一家を描いたドラマ「キムさんのコンビニ」が大ヒットしている。
韓国移民世代と西洋社会の愉快な文化の葛藤を描写し人気を博しているが、登場人物の西洋人男性が着ているTシャツには太極文様にハングルで「トロント」と書いてある。
さらにディズニーでは主人公が韓流マニアとして登場するアニメ『スパイズ・イン・ディスガイズ』(2019)が公開された。
主人公のウォルター・ベケット(トム・ホランド)が仮想の韓国ドラマ「ソウルの情熱」が放送される時間に合わせてテレビの前に座るシーンも登場する。
また劇中にはK-POPガールズグループTWICEのヒット曲「KNOCK KNOCK」が登場しているのも印象的だ。
また映画『ラ・ラ・ランド』のヒロインを演じた女優のエマ・ストーンもK-POPマニアとして知られており、トーク番組でも「K-POPは韓国の音楽だ。この上なく素晴らしく最高だ」と熱く語る場面もあった。
韓国映画史上初めてアカデミー賞6部門の候補に上がったポン・ジュノ監督の『パラサイト』がハリウッドの主流監督たちと肩を並べるようになった背景には、アメリカ人にとって身近な文化として定着した“韓流”があるのではないだろうか。
