韓国映画を支えた「ソウル劇場」、42年の歴史に幕…今月31日まで閉館イベントを開催中
2021年08月18日

ソウル・鍾路3街(チョンノサムガ)エリアは、忠武路(チュンムロ)とともに長い間、韓国国内での映画消費の中心地であった。この地域には団成社やピカデリー、そしてソウル劇場があった。映画1本を一か所でのみ上映していた1990年代の“単館上映”時代、劇場の前にはチケットを購入するため列をなす観客たちで賑わっていた。
最近の観客たちは劇場の前に並ばない。スマートフォンで、いつでも近くの大型シネコンの席を予約できるためだ。その上、最近では劇場へ向かう足取りも遠のいた。新型コロナウイルスの影響でもあるが、“手中の劇場”であるオンライン動画サービス(OTT)を通じて多くの映画が楽しめるようになったからだ。
時代の変化に合わせて鐘路3街の劇場も変わったが、競争力を維持し続けることは難しかった。団成社は2008年に不渡りを経て歴史映画館に変わり、ピカデリーは2004年からロッテシネマを経てCGVに運営権を移譲した。唯一、鍾路3街を守ってきたソウル劇場までも、コロナによる経営難を理由に42年目にして閉館する。
■ スクリーンひとつでスタート…韓国初のシネコンに成長
1978年9月17日、韓国映画『最後の冬(原題:마지막 겨울)』を初上映作品としてオープンしたソウル劇場はスクリーン1つで始まった。制作会社「合同映画会社」の故クァク·ジョンファン会長が再上映館だった世紀劇場を買収。新作の公開館として定着した。その後、スクリーンを増やして全11館を取り揃え、国内初のシネマコンプレックスに成長した。
80年代から90年代の韓国映画復興期には団成社、ピカデリー、ハリウッド、スカラ、国道劇場、大韓劇場などとともに文化の中心地として名を馳せた。鐘路劇場街の衰退に伴い、最新公開された作品だけでなく、独立・芸術映画まで多様な作品が上映され、芸術映画館へと領域を拡大してきた。ミジャンセン短編映画祭やソウル環境映画祭など、小規模な映画祭の開催場所としても活用された。
しかし、大企業が運営するシネコンに押され、業績が悪化。コロナで決定的な打撃を受けた。結局、ソウル劇場は先月、営業終了の告知をホームページに掲載した。
■ 8月31日まで「ありがとうございます 上映会」開催…先着順に無料チケットを提供
ソウル劇場の最後のあいさつは「ありがとうございます 上映会」。感謝の気持ちを込めて11日から最終日の31日まで3週間、平日1日100人、週末1日200人に先着順で無料チケットを提供する。
現在上映中の『モガディシュ(原題:모가디슈)』のほか、ペドロ・アルモドバル(Pedro Almodóvar)監督、ティルダ・スウィントン(Tilda Swinton)主演の『The Human Voice(英題)』、昨年のカンヌ映画祭公式選定作『ラヴ・アフェアズ(英題:Love Affair(s))』など、下半期公開予定作4本が上映される。
ソウル劇場の企画展で選定に漏れた名作映画も再上映される。カンヌ映画祭監督賞受賞作の『フォックスキャッチャー』をはじめ日本映画『歩いても歩いても』などが観客を迎える。
「合同映画社」とソウル劇場の設立者である故クァク·ジョンファン会長が演出し、コ・ウナ現会長が主演した『A lady born in the year of rat(英題)』(1972)はソウル劇場の歴史を締めくくる意味で特別上映される。
ソウル劇場を運営する「合同映画社」は、映画館は閉鎖するが、映画に限らないコンテンツ投資と制作、新しい形態の映画館事業を始める予定だと明らかにした。劇場の建物をどのような方法で活用するかはまだ決まっていない。
激変する時代の流れの中で観客と共に感動を分かち合ったソウル劇場は、観客に最後のあいさつを伝えている。
