ドラマ「D.P.-脱走兵追跡官-」脚本、演出のハン・ジュ二監督インタビュー…「質問を投げるドラマであって、結論を出すものではない」
2021年09月09日

「大きなテーマを議論するより、“私たちは果たして良い人として生きているのか”という質問や個人の独特な事情を込めた映画を作りたい」
ハン・ジュ二監督の抱負が込められた一言だ。ハン監督が最近演出したNetflixの新ドラマシリーズ「D.P.-脱走兵追跡官-」(以下、D.P.)が大きな反響を呼んでいる。ドラマのタイトル「D.P.」は、軍から脱走した兵士を捕まえる軍務離脱逮捕組(Deserter Persuit)を意味する。
実際D.P.として服務していたキム・ボトン作家の原作ウェブ漫画を、ハン監督の演出で新たに誕生させた。原作者との共同脚本作業にベテランの演出力が加わった成功事例として評価されている。
ハン監督は最近、KBSとのオンラインインタビューで、「今回のドラマは質問を投げるドラマであって、結論を出すものでもなければ、ある具体的なメッセージを与えようと意図したものでもない。こんなにヒットするとは思わなかった」と語った。
ハン監督は大学で映画の勉強をしていたが退学し、すぐに現場に飛び込んだという。
彼は「何か問題があって学校を辞めたのではなく、教室で映画を学ぶよりは演出に携わりながら、現場で学ぶことを選択しただけだ」と述べた。
このように現場で学んだ彼の映画制作スタイルは、主演のチョン・ヘインとク・ギョファンなどの俳優の組み合わせや、実在するかのような悪役の演出に、しっかりと発揮された。
特に主演のチョン・ヘインの「淡々とした演技」や節制されたセリフなどは、これまで柔らかいだけだった彼の劇中のキャラクターを見事に変身させたと言われるほどだ。
ボクサーだったという設定に合わせた筋肉質の体格、脱走兵の事情を追跡するシーンで披露される共感を呼ぶ深い眼差しなどが、映画ファンから好評価を得ている。
■主演のチョン・ヘインに、何か演技の注文をしたことやアドバイスしたことはあるのか?
「チョン・ヘインの前作である映画『ユ・ヨルの音楽アルバム』(監督:チョン・ジウ)を見た時に、少し融通の利かないような表情があると感じた。これを活用したかった。自然体のチョン・ヘインに近い姿を“アン・ジュノ(チョン・ヘインの劇中の役)を通して見せてくれたらと思った。このようなことをチョン・ヘインとたくさん話しあい、彼が持っている特徴の中でアン・ジュノと似ているもの、似ている点を見つけて活用してみてほしいとよく伝えた。そのような意味で、後々”俳優が劇中の人物とそっくりではないか“という感じの演出をするようになった」
■悪役を務めた俳優の演技も素晴らしかったが、善と悪の構図を明確にしようと意図したのか?
「特定の悪いキャラクターを見せようとしたというよりも一番大きな悪、または主人公と対立する“アンタゴニスト(敵)”は、システム(軍隊あるいは社会)であるということを示したかった。“ファン・ジャンス”という悪い兵長も見方を変えれば、軍隊に連れてこられ、誰かにいじめられていたのかもしれない、そういう経験を踏襲し、後輩に受け入れられない行為をしているのかもしれないという点を見ていただけたらと思う。ドラマを見ながら、善悪構図を明確に感じたなら、悪役のキャラクターが非常に普遍的に見えたのではないだろうか」
劇中、チョン・ヘインの上司でバディとして登場するもう一人のD.P.“ハン・ホヨル”を務めたク・ギョファンは、“ク・ギョファンという俳優の再発見だ”と言われたりもしている。ハン監督は、元々よく知っている間柄だと明かした。
「私とは、初めての作業ではあったが、昔からの知り合い。どんな俳優なのかをよく知っているので、劇中のキャラクターに合わせて、うまく動けるのではないかという期待が高かった。昔からの知り合いだったので、視聴者にこの俳優をどうやって紹介しようかと考えたが結局、劇中のキャラクターの服を着せて紹介した。他の俳優とも息がぴったりだったようだ。ク・ギョファンは、すでに短編作で少しシニカルなセンスある姿を見せていた俳優。映画関係者の間で、彼の俳優としての魅力や完成された境地は、よく知られているはずなのに、私がこれを先取りしたという感じ」
■監督が挙げる最高の名場面はどこか
ハン監督は、「撮影の後半、1月頃に撮影した最後のシーンが最も記憶に残っている」とし「人工雪を降らせながら撮影したシーンだった。撮影場所が山の中ですぐに日が暮れてしまうため、絶対にNGが許されない状況で、全員が恐ろしいほどの集中力を見せた。とてもうまく撮れて、演出者も自分で感心していた」と当時の様子を振り返った。
今回のドラマの視聴者ファンがインターネットなどで形成されており、全6話のドラマだが、番外編や続編についても検討されているという。
これに対してハン監督は「作家や制作者もみんな、この話から新たに派生される物語について考えてみた。しかし、最も重要なことは、ドラマを見た視聴者の強い希望がなければならないこと」だとし「制作、演出の立場から(軍隊や社会について)再び投げかけられる質問が何か程度は考えている」と述べ、現在議論中の可能性について言及した。
映画『コインロッカーの女』、車両事故取り締まり班を素材にした映画『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』などで、すでに演出力を認められているハン監督。彼は、今回のドラマの演出が確定してからチョン・ヘインやク・ギョファンなどの俳優、そしてスタッフらと2年程の時間を共にしたと語った。
そのためか、「一緒にドラマを作り上げた俳優やスタッフの苦労と努力を、もう一度必ず語りたい」とし、「特に撮影、照明監督は作業中、“光が止まってはいけない”と言って、それぞれのカット(Cut)を入念に作業していた。映画レベルで撮った」と絶賛した。
また、現場での経験が豊富なハン監督らしく、「チョ・ヨンジン助監督、チョン・ドゥグァン人物助監督も本当にタイトなスケジュールの中で、将来性のある実力派の新人俳優を探してきてくれた。本当に感謝している」と述べ、インタビューを終わらせた。
