映画『別れる決心』、暴力なしでも残酷なパク・チャヌク監督のメロストーリー…カンヌでスタンディングオベーション
2022年05月25日

パク・チャヌク監督の新作『別れる決心(原題:헤어질 결심)』は確かに“まろやかな味”ではある。
裸になるようにタブーをさらけ出し、暴力が横行する従来の作品とは異なるだろうといううわさは、ある程度、的中した。息が詰まるような裏切りのシーンも、ベッドシーンも全くない。
ところが、どんな前作よりも深い苦痛を残すのはなぜだろうか。2人の男女の不可解な愛を目で追ってみると、最後は波に押し流される砂の山のように、心が崩れ落ちるのを感じる。
23日(現地時間)、「第75回カンヌ国際映画祭」の大劇場リュミエールで初めて上映された『別れる決心」を一言で定義するなら、大人の“品位”あるメロドラマだ。
愛という単純な単語の裏に隠れる、もつれにもつれた複雑微妙なさまざまな感情を、138分間の叙事で完璧に描写する。パク監督は今回の映画を通じて、暴力性や扇情性がなくても、自身がどれほど映画をうまく作れるかを立証したようだ。
彼は上映が終わった後、「長くて退屈な、旧式の映画を歓迎してくださり感謝する」と謙遜したが、『別れる決心』は彼の代表作の中のひとつに十分なり得るように見えた。
観客も場内が明るくなるのと同時に5分間のスタンディングオベーションを送り、パク監督の言葉が終わるやいなや再び立ち上がって拍手した。
主人公は、強力班の刑事ヘジュン(パク・ヘイル)と韓国で暮らす中国人女性ソレ(タン・ウェイ)。ソレの夫が絶壁から落ちて死亡した事件をヘジュンが捜査することになり、2人の出会いが始まる。ヘジュンは、「夫が山に行ったきり帰ってこないので心配していた。“ついに”死んだのかと」というソレの言葉を聞き、彼女を疑う。夫から受けたひどい暴力と虐待の痕跡を発見し、その疑いはますます大きくなっていく。
それからヘジュンはソレを監視し始める。老人療養保護士として働くソレが、何曜日に誰の世話をするのか、結婚指輪は外したのか、夕食には何を食べたのかまで、ソレに関するすべての情報を収集する。ところがなぜかソレを見つめるヘジュンのまなざしが妙だ。監視ではなく、会いたい人を思う存分見つめるような姿だ。
それはソレも同じだった。警察署で会ったヘジュンの左手薬指をちらっと見て表情に微妙な変化が起きる。自身の周りをうろついている彼に全神経を向けたり、殺人の容疑者を捕まえに行ったヘジュンが心配で、こっそり付いて行ったりする。
しかし、2人は簡単に気持ちを告白しない。お互いの心中をよく知っていながらも、張り詰めた心理戦を続けて行く。ヘジュンがソレのアリバイを確認しながら、初めて2人は関係を発展させるようになる。
しかし、幸せは長続くは続かなかった。ヘジュンは、ソレが徹底的なアリバイ作りをしたという事実を知り、衝撃を受ける。“裏切られた、利用された”という失望もそうだが、刑事が“女に狂って”プロフェッショナルさに欠いたという事実は、もっと受け入れがたかった。しかし、ヘジュンはソレを逮捕するのではなく、証拠品である携帯電話を渡し「海の深い場所に捨てろ」と述べる。2人はそうやって別れるのだった。
13カ月後、彼らは霧が立ち込めることで有名なある都市で出会う。ヘジュンの隣には17年をともに暮らした妻(イ・ジョンヒョン)が、ソレの隣には新しい夫(パク・ヨンウ)がいる。
殺人犯と殺人犯を逃がした刑事。恋に落ちた2人は本当に別れることができるのだろうか。
ストーリーだけ見ると、これまでよく見聞きしていた禁じられた愛を描いた悲劇だと考えるだろう。しかし『別れる決心』は、分かり切ったメロとは明らかに違う。小さな要素がぎっしりと詰め込められ、この世にたったひとつしかない愛の物語としてはばかることなく進んでいくためだ。一見、極端に映るかもしれないが、世の中にはこんな愛もあるということを受け入れさせる。ディティールを注意深く見なければならない理由だ。
美学的にも拍手を受けて当然だ。2人の主人公の揺れ動く気持ちを見透かすような果敢なカメラの動きと、パク・チャヌクだけの色彩がにじみ出る美術、チョン・フンヒが歌う「霧(原題:안개)」が完璧に調和している。タン・ウェイとパク・ヘイルが放つオーラは言うまでもない。
映画は28日までカンヌ映画祭を通じて上映され、韓国では来月29日に公開される。
