映画『ベイビー・ブローカー』のソン・ガンホ、「受賞の瞬間はパニックに…ゆっくり味わいたい」
2022年06月01日

俳優ソン・ガンホにカンヌ映画祭の主演男優賞を抱かせた映画『ベイビー・ブローカー』が先月31日午後、試写会という形で韓国のマスコミに公開された。
映画は知られている通り、是枝裕和監督が構想した一種の類似家族を、ソン・ガンホとカン・ドンウォン、イ・ジウン(歌手のIU)、ペ・ドゥナなど豪華韓国俳優陣が演じた。
サンヒョン(ソン・ガンホ)とドンス(カン・ドンウォン)のブローカーデュオは、ソヨン(イ・ジウン)がベイビーボックス(赤ちゃんポスト)に連れてきた赤ちゃんを売ろうとする。しかし翌日、ソヨンが赤ちゃんを連れに戻ると、2人はいっそソヨンと一緒に赤ちゃんを売ろうと旅に出る。
ワゴン車に乗り釜山(プサン)から出発。取り引きはうまくいかず、次の購入者を探し回りながら数日間、昼夜をともに過ごす。この過程で登場人物たちは次第に、そして当然に、家族の意味を悟ることになる。是枝監督の近作と同様、家族関係に大小なりともの傷を持った人物たちが、理想に近い共同体を成すというストーリーだ。
彼の映画の中の家族は、コミュニケーション不足の家族や腹違いの兄弟、入れ替わった子どもなどで範囲を広げ、2018年作の映画『万引き家族』では非血縁関係にまで拡張された。『ベイビー・ブローカー』も類似家族を構成する人々が、血の一滴もつながっていないという点で前作の延長線上にある。
先月26日(現地時間)、フランスのカンヌ国際映画祭で作品が初めて上映されると、一部の海外メディアは犯罪者を愛らしく描写したと酷評した。実際にサンヒョンとドンスは赤ちゃんを売りに行く間、特に内的葛藤を表に出さない。
過去に売り渡した赤ちゃんがもう小学生になったというセリフから、2人は少なくとも10年前後同じことを事務的に処理してきたものとみられる。しかし同行したソヨンさえ途方もなく低い赤ちゃんの“価格”に憤り、赤ちゃんの“商品価値”を高めようと努力するシーンは、3人の個性がもたらす効果を極大化するための仕掛けとみられる。
映画には是枝監督のトレードマークである独特の淡白さとクールさが減り、後半になるほど観客に特定の感情を要求するようなシーンが続々と出てくる。ドンスとソヨンの間に突然生まれたラブラインは、物語の展開や監督のメッセージと無関係な蛇足と感じられる。
映画は、人間の本性が基本的に善良だという前提の下、人間が個人の欠乏をお互いに補い生命も守ることができると語る。これからは是枝監督の作品に“家族映画”ではなく“共同体映画”などのタイトルを付けても差し支えないように見える。血縁関係がない映画の登場人物たちが望むのは、“典型的”で“正常な”家族形態ではなく、構成する人物間の配慮と交感であるためだ。
是枝監督は試写会後に行われた懇談会で「サンヒョンは犯罪者ともいえるが、結果的に赤ちゃんの生命を守ろうとする行動に出る。ところがその選択自体がまた犯罪だったという点で、矛盾した行動に見えるかもしれない」とし、「どのように受け入れるかは観客の感性と考えに任せたい」と述べた。
映画にはソヨンが「生まれてくれてありがとう」と語るシーンが登場する。是枝監督は「養護施設出身の方々に会って話を聞いたが、その方々がずっと『私が本当に生まれてよかったのか』という疑問を抱き生きていらっしゃった」とし、「普段は、ストレートなメッセージだと思われるようなセリフを、あまり使わない方だが、今作では、闇の中でそのセリフが響き渡るようなシーンを作った」と説明した。
是枝監督は生命という映画の糸口について、「文化の違いを超え普遍的に伝えられるテーマ」とし、「複数の施設を取材しながら批判の矢が、ずっと母親に向けられていることを感じた。本質的な問題が何なのか、真の責任はどこにあるのか深く扱いたかった」と述べた。
ソン・ガンホはカンヌ映画祭の主演男優賞を受賞した時、「一瞬、パニックになる妙な気分になった」と振り返った。それとともに「これが夢なのか現実なのかという状態で数秒間が過ぎた」とし、「イギリスにいらっしゃるポン・ジュノ監督、韓国にいらっしゃるキム・ジウン監督からメールが真っ先に来た」と伝えた。
ソン・ガンホは「あまりにも褒め過ぎで身の縮む思い」とし、「感動をゆっくり、ちびちびと味わいたい」と付け加えた。
是枝監督はソン・ガンホの受賞について、「ポン・ジュノ、イ・チャンドン、パク・チャヌク監督の作品で賞を受賞してもおかしくない」とし、「私が監督を務める作品で賞を受賞することになり、少し恐縮な気持ちもある。一方でこの作品にとっては最高にうれしい賞になった」と述べた。
