パク・チャヌク監督の映画『別れる決心』、愛と疑心はいつも反比例?

2022年06月22日

警視庁の強力チーム長“ヘジュン”(パク・ヘイル)は、革ジャンに筋肉質の体つきを誇る韓国映画の典型的な刑事のキャラクターとは、全く違う。いつもきちんとしたスーツにネクタイ姿だ。容疑者を追い、急な階段を駆け上がる時も同じだ。取り調べを終えると、被疑者にソルロンタンやジャージャー麺ではなく寿司をごちそうする。彼は「品位は自負心から生まれる」と述べる。
21日の試写会で韓国のマスコミに公開されたパク・チャヌク監督の新作『別れる決心(原題:헤어질 결심)』に登場するヘジュンは、映画の品格を象徴するキャラクターだ。刑事としてのヘジュンの品格は、腕力や体力ではなく、相手の口癖や手の甲の傷などから犯罪のにおいを嗅ぎ取る直観から始まる。
ヘジュンは、夫を失った“ソレ”(タン・ウェイ)に初めて会った瞬間から、彼女が犯人であることを直感する。韓国語がつたないソレは、夫の死を言及しながら「ついに」という単語を使った。
しかし、エリート刑事ヘジュンの品格は、ソレによって崩されていく。
身辺調査や聞き込み、張り込みは、相手の過去と人間関係、性格、趣向、癖を確認する過程だ。ヘジュンは自分の捜査が事件解決のためのものではなく、ソレに対する人間的な関心であることを自覚し、自分自身に絶望する。他の被疑者だったら高級寿司ではなく後輩刑事と同じように弁当を差し出していたかもしれない。
ヘジュンはソレとの初の面談で、「パターンを知りたいんですが」と言って、携帯電話を出させる。ソレはヘジュンが担当する別の事件に触れながら、「韓国では好きな人が結婚すると、好きになることをやめるんですか?」と問う。2人がやり取りするセリフは「100%捜査映画であり、100%ロマンス映画だ」というパク監督の言葉どおり、愛と疑いの両方を兼ね備えている。
刑事と被疑者が、お互いを愛することになった時、愛と疑心は反比例するしかない。ソレのアリバイが確認されると、2人の関係は急スピードで発展する。2人だけでなく観客も、愛と疑心のどちらに結論が出るのか、関心を集中させる。
しかし『別れる決心』の核心は、このような図式的な観点を崩す。別の事件が繰り広げられる後半部、愛と疑心の関係は、正反対に変わる。反比例するのではなく、お互いに影響を与え合いながら増殖するのだ。
ヘジュンはもちろん、観客も最後までソレに対する疑心を拭えないだけでなく、ますますより強力な心証を得る。映画は、ソレに対するヘジュンの愛と2人を見守る観客の感情が、同じ強さになるよう設計されている。波が押し寄せる海辺を背景にしたエンディングのシーンは、感情を最高潮に引き上げるだけでなく、パク・チャヌクスタイルのミザンセーヌ(作品の筋、登場人物を作り出すこと)の絶頂を見せる。
パク監督は、これまで見せてきた破格的でグロテスクな描写を取り除き、それらの代わりに波や霧、崩壊のようなキーワードで埋めた。パク監督は、同日の記者懇談会で、「激情というか、強烈で吹き荒れる感情ではない、ひそかに隠れた感情に集中する映画をやるためには、刺激的な要素のダイヤルは、少し下げなければと思った」と述べた。
パク監督は「2人が、露骨に表さずに自己感情をどのように伝えるのか、または耐えがたい感情をどのようにバレずに隠すか悩む話」と述べた。ソレのつたない韓国語は、主なユーモアコードの役割とともにパク監督のこのような意図を忠実に伝える仕掛けとなった。
タン・ウェイは「感情を、もっと中に押し込めるように表現しなければと思った」とし、「セリフを覚えてやるには限界があった。その過程で、声を出さない感情表現がよりうまくいったのではないかと思う」と述べた。
カンヌ映画祭は先月、パク監督に監督賞を与え、彼の変化したスタイルを高評価した。アメリカHBOドラマ「The Sympathizer(原題)」を準備中のパク監督は、「次の作品がどのようになるか分からないが、暴力などの露出度が高い作品をいくつか準備しておいた。その都度変わるだろう」と述べた。
『別れる決心』は、韓国で29日に公開予定だ。上演時間は138分、年齢制限は15歳以上観覧可となる。

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