ウンサン、ボーカルだけで国学のクロスオーバーを実現…「ジャズは世界の全ての音を活用できると思う」

2022年09月29日

「国楽家が見たら、“スイカの皮なめ” (内実や本質を見抜けないまま表面的に事を行うという意味の韓国のことわざ)だと言うかもしれないが、ジャズは世界の全ての音を活用できると思う。今回は、私が国楽に挑戦したアルバム」
簡単な道をややこしく通る人がいる。ほとんどは“知らずに”このような“愚かな行動”を取っているが、この貫禄のジャズDIVAは音楽的自由のために、あるいは自分の実力を試すために、“知りながらも”曲がりくねった道を選んだ。
まさに最近、10thフルアルバム「Who Stole the Skies」をリリースした歌手ウンサンの話だ。民謡やパンソリなど、韓国の伝統音楽との融合を試みながらも、国楽器を一切使用せず、ただ自身の声だけでこれを具現した。
ウンサンは29日、インタビューに応じ「10thフルアルバムは“私”という楽器が、国楽をどのように活用するのか自ら試すきっかけになった」とし「編曲の過程で、国楽器を入れるか悩んだりもしたが、結果的には私一人でやろうと決意した」と振り返った。
アルバムにはダブルタイトル曲「I'm not a butterfly」や、「Who Stole the Skies」をはじめ、南道民謡を再解釈した「夢だ (原題:꿈이로다)」、自作曲「廣大歌 (原題:광대가)」、リメイク曲「四柱八字 (原題:사주팔자)」など、10曲が収められた。
彼女は、「(大学時代は) ロッカーだった。その後、ジャズをやるようになり、ブルースを求めてさまよいながら国楽にたどり着いた」とし、「この全ての音楽的経験を通して、より大きな自由を探そうとした。音楽的な自由に対する切実さを、私なりに取り入れたアルバムだ」と紹介した。
“自由”というキーワードにピッタリなタイトル曲「I'm not a butterfly」は、自身に向けられた世の中の拘束に断固として「No」と言う楽曲だ。
ウンサンは、「アーティストは、自分の経験を音楽で吐き出さなければならないが、国楽がしたいのに大衆の視線を恐れて挑戦できないのは愚かなことだと思った」とし「このような考えを正直に打ち明け、“私を未熟だと批判しないで”と訴える歌だ。“私を決められた枠に閉じ込めないで”というメッセージ」だと強調した。
彼女は、1stトラック「夢だ」で南道民謡を、9thトラック「廣大歌」と10thトラック「Sonnima」でパンソリを試みた。国楽に踏み込んだきっかけが気になった。
「国学家のアン・スクソン先生やチャング (韓国の伝統打楽器)の演奏家キム・ドクス先生が好きで、幼い頃から共演してきた。音楽的に悩んでいたある日の夜、散歩していたら突然、アン・スクソン先生の“シナウィ” (国学の種類。民族器楽合奏曲)が聴きたくなった。それで毎日、少しずつ歌をマネしながら練習した。やってみると面白かったので、韓国国楽の歴史から掘り下げてみた」
彼女は、「コロナ禍により、時間ができたので国楽の練習をたくさんすることができた」とし「朝、声を出し切る練習をする。エネルギーをたくさん使うせいか、夜9時になったら眠くなる」と笑った。
ウンサンは「ジャズミュージシャンは、孤独な自己研磨の時間をたくさん持つことで、音楽的自由を少しずつ増やし、これにより喜びと幸せを感じる」とし「国楽を音楽の道具として使うことについては、まだ好奇心でいっぱいだ」と語った。
「ジャズと国楽は、結局は同じ話をしているのだと思う。リンゴを、言語によって“Apple”や“苹果 (ピングゥオ/中国語でリンゴ)”と言うように、アルゼンチンはタンゴで、韓国は恨という名前でそれぞれのブルースを表現している。ブルースのない国はないと思う」
ウンサンは「このように、ジャンルを越えた歌で表現するのがミュージシャンとしての喜び」だと力説した。
ウンサンは、アルバム名と同名の「Who Stole the Skies」では環境問題を扱う。
彼女は、「私たち全員に責任がある」(We're all to blame)とし、澄んだ空を失ったのはあなたと私のせいだと声を上げる。聴く者の耳を刺激するスキャット (Scat)は、妙な不協和音が、まるで人間に舌打ちをする地球の叱責のように聞こえる。
彼女は、「地球がどれほど危険な状態に置かれているのかを表現しようと、わざと不快になるようなサウンドを使い、攻撃的に編曲した」、「“このままではダメだ”というメッセージを繰り返し与えようと、スキャットを入れた」と説明した。
そして「ジャケットの背景も環境を象徴する緑色にした。しかし、暗い展望を表現するために、明るい色ではなく、くすんだ緑色を使った」とし、「自分が使わない物は、捨てずに誰かにあげたり、外出する時は全ての電気のプラグを抜いたりするなど、些細な努力をしている」と付け加えた。
ウンサンは6thトラック「今日 (原題:오늘)」や7thトラック「目を覚ませ (原題:틔우리라)」を通して、人生に対する思索を表現した。この2曲の歌詞は、道家哲学者として有名なチェ・ジンソク西江 (ソガン)大名誉教授が書いた。
ウンサンは楽曲「今日」で、「あなたの昨日に私はいない ただあなたは今日」だと歌い、若者に温かい慰めを伝える。楽曲「目を覚ませ」では、チャングのように心に響くコントラバスのサウンドを用いて、メッセージに深さを加えた。
彼女は、「チェ教授が、私と初めて会った日に交わした会話を基に歌詞を書いてくれた。その日、創作のインスピレーションが強く来て、1日で4曲も作曲した」とし、「チェ教授は、“とどまっているものは腐っていく”と言い、“渡る”という表現をたくさん使っていた。私もこれと似た考えを持っている。私を拘束する全てのものから抜け出したいという“I'm not a butterfly”と相通じるメッセージだ」と述べた。
パク・ジェチョンの歌をリメイクした「四柱八字」は、弟のように親しいMC Sniperがフィーチャリングで参加し、ラップを入れた。「廣大歌」は、タイトルから垣間見えるように、絶えず舞台に立つウンサンの自伝的な話を歌詞に盛り込んだ。
ウンサンは、「私は、舞台に立つ前にいつも“観客・スタッフ・ミュージシャンが一つになれる音楽を作ってほしい”、“この瞬間を最も美しい瞬間にしてほしい”とオーダーし、“ファイト”と叫んでいる」とし「既存の音楽と新しい音楽をうまく融合させなければならないという点で、ライブコンサートはいつも私にとって悩みの種になる」と打ち明けた。
彼女は来月6~7日に、ソウル世宗 (セジョン)文化会館Mシアターで新譜発売を記念した単独コンサート「The Jazz」を開き、舞台でファンに会う。「一時に青雲が官渡 (クァンド)にのぼり、長安を遍踏する」という漢字だらけの「四柱八字」の歌詞に慣れず、ここ (インタビュー場所)に来る車の中で歌詞を覚えたと明かし、笑った。
「韓国ジャズ協会長を昨年から担っているが、会長任期中に“韓国ジャズのリバイバルを起こしてくれた”と評価されたい。K-POPは今や、大衆的に広く知られたが、K-ジャズもこれまでの10年間で共にレベルアップしたという。韓国には、とても素晴らしいジャズミュージシャンが多いので、誇らしい」

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