映画『初選挙』のチョン・フソク監督、「激しく違っていても平和に共存しなければならない人々の死闘」
2022年10月27日

「激しく違っていても平和に共存しなければならない人々の死闘ではないだろうか」
来月3日に公開を控えたドキュメンタリー映画『初選 CHOSEN (原題:초선)』(以下、『初選』)を演出したチョン・フソク監督は、アメリカ選挙史上最も多くの韓国人が出馬した2020年の連邦下院議員選挙を見守った感想をこのように述べた。
在米韓国人で弁護士出身のチョン監督は、今作を通じて当時の連邦下院選挙に出馬した韓国人候補を追いながら、アメリカの韓国人社会の現状を描いた。
26日、ソウル・永登浦 (ヨンドゥンポ)区にあるホテルで会った彼は、「難しく、センシティブで見づらい点がたくさんあるだろうが、理念的にアプローチするよりは価値観が違う者同士が、どのように共存するのかに焦点を合わせて見てほしい」と話した。
デビュー作『ヘロニモ (原題:헤로니모)』(2019)でキューバの韓人社会にスポットを当てたチョン監督は、John Robert Bolton (ジョン・ロバート・ボルトン) 前アメリカホワイトハウス国家安全保障担当補佐官の回顧録を読み、『初選』を構想するようになったという。
「John Robert Boltonをはじめ、Donald John Trump (ドナルド・ジョン・トランプ) 前大統領、 Mike Pompeo (マイク・ポンペオ) 前国務長官の衝動的な決定により、ハノイ会談が決裂した事実を見ながら、ある国家の平和体制が数人のアメリカ人政治家によって握りつぶされることもあると思った。もし、在米韓国人がその場にいたなら、もっと友好的な決定を下すことができたのではないだろうか、という好奇心が湧いた」
映画は、David Kim (デイビット・キム)、Marilyn Strickland (マリリン・ストリックランド)、Michelle Park Steel (ミッシェル・パク・スティール)、Andy Kim (アンディー・キム)、Young O. Kim (ヤング・キム)まで、計5人の候補が選挙に出馬する様子を収めた。彼らの経歴は様々だ。移民第一世代と第二世代、共和党と民主党、政治系の主流と非主流が混ざっている。
チョン監督は、「5人の候補の異なる政治的方向性をそのまま盛り込もうと努力した」と述べた。
「それぞれのストーリーを映画にする許可はもらっていたが、映画が彼らの迷惑になってはいけないと思った。実験には向かない映画だった(笑)。彼らの政治的スタンスがはっきりと出ているぶん、ありのままを収めたかった。それを見て不快に感じるのも共感するのも観客次第だ」
5人の候補の中で最も多く出ているのはDavid Kim。LAの韓国人タウンとされる地域区に出馬した彼は、移民弁護士であり、性的少数者で、最も核心的な性向を見せた。当時、韓人社会の全面支持を受けられなかったにもかかわらず、5%ポイント差で落選し、健闘したという評価を受けた。
「David Kimは、韓国人社会が抱いていた多層的な不満を言い表せるようにした候補だ。世代間の葛藤、理念の葛藤、宗教の葛藤、人種の葛藤、性的少数者に対する偏見まで、全てのことがこの候補1人から出てきた。また残りの4人の候補は政治的立場があったのに対し、David Kimは完全に“アンダードッグ” (不利な状況に置かれている人)だった。“アンダードッグの反乱”にスポットを当てたいという気持ちもあった」
5人の候補は、11月に開かれるアメリカ中間選挙にも出馬する。チョン監督は、「すごく熾烈な選挙になると予想される」とし、「もしDavid Kimが当選すれば、韓国人社会だけでなくアメリカの主流にも新鮮な風が吹くと思う」と話した。
『ヘロニモ』に続き、ディアスポラ (移民)を素材にしたドキュメンタリーを作ったチョン監督は、『初選』を撮りながら、韓国人ディアスポラに関する素材をさらに発掘し、語りたい気持ちが大きくなった」と明かした。
「(Apple TV +オリジナルシリーズ)『Pachinko パチンコ』を通じて、韓国人ディアスポラの物語は普遍性があるということが証明されたと思う。本当に素材が限りなく多い。今後もこのような話を続けて映画にすることができたらいいなと思う」
