どれだけの人が犠牲になれば世の中は変わるのか…映画『次のソヒ』
2023年02月02日

“ソヒ”は、友達と練習室でヘトヘトになるまで踊るのが好きな女子高校生。
いつも堂々としていて、言うべきことは言うタイプだが、卒業を控えたソヒも就職という関門の前では小さくならざるをえない。
担任の先生は、やっとのことでつかみ取った大企業の“席”だからと、コールセンターでの実習に行くよう勧める。そうやってソヒの社会人生活は始まった。
ソヒの仕事は、机がずらりと並ぶオフィスの一画に座り、ヘッドセットをして顧客からの電話にひたすら応対することだ。腹立たしい要求、罵倒、難癖はなんとも耐え難い。
業務に慣れないソヒは、あまり多くの電話に応対することができず、“コール数”をこなせない低成果者という烙印を押される。
彼女は、この状況から抜け出そうと、勤務時間外も働き仕事に没頭するが、それに応えてくれるのは最低賃金にも及ばない差別的な賃金だけだ。
彼女が不当な待遇を前に声を上げても変わることなどなく、ソヒは内外でますます孤立していく。これ以上会社に行きたくないが、現場実習という名前の「闇の労働」から抜け出す道はない。
映画『次のソヒ (原題:다음 소희)』は、実際の事件をモチーフにした映画だ。
2016年、全州 (チョンジュ)で、就職連携型現場実習を終えた特性化高校 (進学ではなく、就職を目指す高校)の学生が、極端な選択をするという事件が起こった。遺族と労働界を中心に、“死を促した背景には不当労働行為がある”という声が高まり、現場実習問題は社会的ニュースとなった。
それでも、現場実習の過程で法規と手続きを守らない風潮は続いた。卒業を控えた学生たちが、派遣された現場で命を失うという悲惨な事件も繰り返された。
映画はこのように、いくら不当さを叫んでも変わらない現実に注目する。長い間、問題を傍観し、お互いに責任をなすりつけあってきた韓国社会の構成員に「次のソヒは誰なのか」という質問を投げかける。
チョン・ジュリ監督は先月31日、ソウルCGV龍山 (ヨンサン) I'PARK mallで開かれた記者懇談会で「ソヒだけの話、ある一つの事件のはずが、実はそうではなく、それ以前、あるいはその次と、永遠に繰り返されているのではないかと問いたかった」と作品の制作意図を説明。
そして「撮影を準備していた時、麗水 (ヨス)でフジツボを捕っていたある学生が死んだという事件があった。その生徒もまた、現場実習に出ていた学生だった」とし「ニュースになって初めて社会的問題となり、教育部長官、大統領が謝罪したが、再び忘れ去られてしまう過程を見るのが心苦しかった」と話した。
作品は、2014年『私の少女』でデビューしたチョン監督が9年ぶりに出した新作。『私の少女』でタッグを組んだ俳優ペ・ドゥナが、事件の真相を暴く刑事“ユジン”役を担った。
ペ・ドゥナは、「学生一人死んだことの何が問題なのだ」という世間の態度に憤り、真実を追求していくユジンとなり、持ち前の繊細な演技を届ける。
ペ・ドゥナは「シナリオを初めてもらった時、素材とテーマ意識、全てのものに改めて惹かれた」とし「確実に難しい映画だったが、繊細に演じなければ、観客の生きた感情が、退屈してしまうと思った」と振り返った。
ソヒ役は、新鋭俳優キム・シウンが担った。彼女の長編デビュー作だ。新人俳優だとは思えないほど、感情表現が安定している。
キム・シウンは、「監督とほんの少しだけ会話をし、その日に“ソヒ”になった」とし「“私が、チョン・ジュリ監督やペ・ドゥナさんと一緒に初めての作品をするなんて…”という責任とプレッシャーが同時にわいた」と振り返った。
『次のソヒ』は、海外の映画祭で注目された。第75回カンヌ映画祭批評家週間の閉幕作に選ばれたのだ。カンヌ映画祭は、『次のソヒ』について「衝撃的ながらも目が離せない作品」だと評価した。
第26回ファンタジア国際映画祭でも閉幕作として紹介され、監督賞と観客賞 (銀賞)を受賞。この他にも、第12回アムステルダム映画祭、第27回釜山国際映画祭など10以上の国際映画祭に招待され、好評を博した。
