“生と死”の間にいる夫婦の愛の物語…映画『A Song for my dear』

2023年02月21日

30年以上、夫婦として生活してきた“ドンヒョク”と“ヨンヒ”。人生を教授として、そして国楽人として過ごし、全国を転々としてきたドンヒョクは、晩年を故郷で過ごしたいという妻の頼みを受け入れる。
彼は、ヨンヒの故郷で美しい田舎暮らしを始めるが、いつからか妻の言葉や行動がおかしいことに気付く。ヨンヒは今言ったことを忘れ、今何をしようとしていたのか忘を忘れてしまう。ついには腹を立て、暴力的になったりもする。
ドンヒョクは、あとになってようやく妻が認知症の一種アルツハイマー病の末期という事実を知るが、もう手遅れの状態だった。妻の病状を遅らせようと努力するが、これ以上一人で看病することも、療養病院に行かせることもできず、苦しむ。
ドンヒョクはヨンヒの介護をしながら、人生最後の幸せを取り戻すことができるのだろうか。
映画『A Song for my dear(英題)(原題:그대 어이가리)』は、生と死の間に置かれた夫婦の愛の物語だ。
作品は、認知症で苦しむ過程をとてもリアルに描き出す。アルツハイマーの妻の背を見ながら日々疲弊していく夫、時々完全に正常になる母親を見て涙を流す娘など、われわれの近くにいそうな家庭の現実をあらわにする。
劇中、ドンヒョク役を務める俳優のソン・ドンヒョクは、実際に15年間、認知症の母親を介護していた経験を持つ。映画のクランクインをわずか2週間後に控え、母親と別れたという彼は、作品に格別な愛着を示した。
ソン・ドンヒョクは最近、マスコミ試写会および懇談会で「母親は幽霊が見え、幻聴が聞こえる“妄想認知症”だった」とし、「台本を見ながら、高齢化社会で認知症という問題が家族や社会の問題になりうると感じた。非常に重要なメタファーを伝えることができると思った」と振り返った。
作品は、最近ではなかなか見ない喪輿(もこし)のシーンから始まる。ソン・ドンヒョクは劇中、故人の極楽を願う“挽歌”など、さまざまなパンソリを歌った。
彼は、自身のパンソリの師匠は、国楽人のシン・ヨンヒ氏と亡くなった母親など、4人いると紹介しながら、「土台にある韓国的情緒、私たちが忘れて暮らしていた葬儀文化など、私が40年間磨いてきた音をしっかりと表現できる映画だ」と述べた。
ドンヒョクの妻ヨンヒ役は、演劇俳優出身のチョン・アミが務めた。
40年間舞台を守りながら200本あまりの演劇に出演してきたベテラン俳優なだけに、作品の中では演技の実力が自然とにじみ出ている。
チョン・アミは、「韓国は安楽死の方法がない」としながら、「どれだけ成功的な老後を準備するのか、豊かに暮らせるのか、どのように死を迎えるのかなど、それに対する問題を、少しは指摘し公論化したのではないかと思う」と意味を加えた。
作品は2021年、新型コロナウイルス感染症の事態が深刻だった状況の中で撮影を終えた。直ちに劇場で公開できなかったため、海外の中小規模の映画祭に出品し、監督賞、作品賞、女優主演賞など51冠を獲得した。
演出を務めたイ・チャンヨル監督は、「フィレンツェ韓国映画祭に出席したとき、多くの方が涙を流す姿を見た。華やかで特別な映画でなくても、どのように人生を生き、死をうまく迎えるのか、作品の中に溶け込ませたと思う」と説明した。

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