イ・ハニ&イ・ソンギュン主演映画『キリングロマンス』、B級感性を加えた現代版『人形の家』

2023年04月21日

「もうどちらかだわ、ジョナサンが死んでも、私が死んでも」
一時、全国民を魅了していたトップスターのファン・ヨレ (イ・ハニ)はデビュー後、大衆が望む姿に合わせて生きてきた。ひどい演技力で嘲弄の種になった後、初めて休暇に出かける自由を得るが、そこで出会ったジョナサン・ナ (イ・ソンギュン)と恋に落ちて、再び他人の基準に合わせて生きる人形の身の上になる。
体重は49キログラム、顔には明るい笑みがあってこそ初めて“完成形”と話すジョナサンの拘束と執着に、離婚も要求してみるが、帰ってくるのは暴力と脅迫だけ。
映画『キリングロマンス (原題:킬링 로맨스)』は引退したトップスターのヨレが夫から抜け出すために繰り広げる死闘を描いたコメディ。夫が望む姿に合わせて生きていきながら、真の自分を失ってしまったヨレの姿は喜劇『人形の家』の主人公ノラを連想させる。
家庭内暴力とガスライティングという素材とコメディジャンル。イ・ウォンソク監督は両立できないようなこの2つを童話の本を読むような額縁式構成、1編のミュージカルのようなシーケンスなど、さまざまな装置を活用して融合することに成功した。
『キリングロマンス』は新鮮なユーモアのツボ、主題意識の変化、洗練されたミザンセーヌが加わった“イ・ウォンソクスタイルの童話”。
イ監督は誇張された設定と奇抜な演出で愛された『男子取扱説明書』(2012)の長所をそのまま生かしながらも、前作を踏襲するにとどまらず、新しい進化を見せてくれる。
『キリングロマンス』の最も大きな笑いのポイントは歌。
ジョナサンから逃げる方法を見つけられなかったヨレは、殺人を計画するが、その暗殺方法は“フィクファクフク”や“プクシクファククン”のようが擬声語で表現される。
やや突拍子のないこの擬声語の繰り返しは、それ自体だけでもコミカルだが、それだけにとどまらず、一種のリズムを作り出し笑いを与える。また、映画で繰り返し登場するグループH.O.T.の「Full Of Happiness」やRAIN(ピ)の「Rainism」などの音楽は、状況によって変奏され、笑いのツボとして活用される。
何よりこの作品が『男子取扱説明書』の進化バージョンであることを感じられる部分は、作品の主題意識とミザンセーヌだ。
『男子取扱説明書』が、B級感性が際立つ独特なロマンスコメディだったとすれば、『キリングロマンス』は他人に不条理に抑圧されていた弱者たちが連帯して前に進む姿を描いている。
大衆の視線と芸能産業の束縛に自分を合わせたヨレは、逃避先として選んだ結婚生活でも夫のジョナサンに振り回される。そんなヨレに手を差し伸べたのは、三浪生のボム (コンミョン)。家族全員がソウル大出身の家で“みにくいアヒルの子”として生きてきた彼は、自身のアイドルだったヨレの幸せのために殺人計画に加担する。
巨大な悪に対抗する勇気が消えるたびに、お互いを応援し助け愛、力になってあげる2人の姿は胸にじんとくる感動を抱かせる。
ウェス・アンダーソンの作品を思わせる流麗なミザンセーヌも際立つ。パステルトーンで具現された南太平洋のクアラ島と、原色で華やかさを加えたジョナサンの自宅は、『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)を、間位置に望遠鏡でヨレを観察するボムの姿は『ムーンライズ・キングダム』(2012)の主人公の姿を思い出させる。
何よりこの作品の最大のポイントは、俳優陣の演技力。
ヨレ役のイ・ハニは映画『エクストリーム・ジョブ』(2018)やドラマ作品などで見せた抜群のコミカル演技で作品をリードし、ヨレの助力者ボムを演じたコンミョンはかわいいルックスと無害な魅力で彼女を後押しする。
イ・ソンギュンの演技変身を見る楽しみもなかなかだ。ヨレの夫を演じた彼は、滑稽なヒゲと言葉遣いで新鮮なキャラクターを作り出し、これまで見られなかった破格的な演技変身を披露する。
イ・ウォンソク監督は試写会直後に開かれた記者懇談会で、「停滞した瞬間に自分を本当に考えてくれる人が勇気を与えれば、変われる力が生まれるようだ」とし、「この映画を通じて勇気について話したかった」と述べた。
『キリングロマンス』は韓国で上映中で、上映時間は107分、年齢制限は15歳以上観覧可。

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