映画『コンクリートユートピア』の公開を控えたイ・ビョンホン、「僕でも怖かった自分の演技…CGかと思った」
2023年08月02日

王の代役をした道化師(『王になった男』)から殺人鬼を追撃する要員(『悪魔を見た』)、愛のためにボスに追われる男(『甘い人生』)、巨大権力に立ち向かう遊び人(『インサイダーズ/内部者たち』)まで。
イ・ビョンホンは、映画をキャラクターで記憶させる数少ない俳優の一人だ。来る9日に公開されるオム・テファ監督の新作『コンクリートユートピア(原題:콘크리트 유토피아)』でもその力を発揮する。
この映画は、大地震で廃墟となったソウルに唯一残った“ファングンマンション”で繰り広げられる物語を描く。イ・ビョンホンは、生存のために次第におかしくなっていく新住人代表の“ヨンタク”を演じた。恥ずかしがり屋で平凡な町のおじさんが、血なまぐさい残酷なリーダーに変わる過程を劇的に見せる。
彼は1日、ソウル・鍾路(チョンノ)区のあるカフェで行われたインタビューで、まなざしで表現した演技が好評だという話を聞くと、「最近の俳優たちは、目玉をいくつか持ち歩いている」という冗談を言った。
「昨日、試写会で完成版を初めて見た。僕さえも『僕にはこんな顔があったのか』と思うシーンがあった。僕が見ても自分の姿が怖かった。『CG(コンピューターグラフィックス)かな?どうしてあんな目つきをしているんだろう?』と思った」
ヨンタクは、映画序盤では弱く頼りない男として描写された。突然代表になった直後、それなりに一線を守りながら住民たちを導くが、時間が経つほど独裁者のように変化する。
イ・ビョンホンはヨンタクを演じる時、「人生の重みに押しつぶされそうになっている憂うつな家長から出発した」と述べた。
「ヨンタクは、一度もリーダーになったことのない平凡な小市民だ。“乙”の中でも乙の人に権力ができた状況だ。ヨンタクは、大きくなる権力を持て余すことができず、これをどうやって使えばいいのかも分からないという感じを受けた。そうするうちに自分の中に狂気が生まれるのだ。ただ絶対的な悪人ではない。この映画のどこにもそんな人はいない。皆、常識的に悪い人たちだったり常識的に優しい人たちだったりする」
このようなキャラクター分析のおかげか、劇中イ・ビョンホンはヨンタクそのものに見える。彼は、撮影現場で台本を読まなくてもいいほど、事前準備を徹底したという。シーンひとつを撮るにも、いろいろなバージョンで演技をし、オム監督に気に入ったものを選んでほしいとリクエストしたりもした。
意見も積極的に伝えた。おかげで、現場では即興的にセリフが変わったり作られたりし、シナリオにはなかったシーンが追加された。
一部は、トップスターのイ・ビョンホンが主に独立映画を演出してきたオム監督の作品に出るという事実に首をかしげたりもしていた。
イ・ビョンホンは「シナリオがとても面白かった」とし、「監督と話を交わしながらどんな色で映画が作られるかを感じることができた」と出演を決定した理由を説明した。
「まず物語の力を信じている。僕は、この映画が単純に災難映画だとは思わない。だからといってヒューマンドラマやスリラーでもない。スリラーが強いヒューマンブラックコメディ“ジャンルだと言いたい。複合的な色の物語だ」
彼の言葉のように『コンクリートユートピア』は、絶えずジャンルが変わる印象を与える。ヨンタクが変貌する姿に合わせて作品の雰囲気も変化する。
しかし、当のイ・ビョンホンは自分の演技に確信が持てなかったという。ただ想像だけで、ヨンタクの置かれた状況を察し、感情を移入しなければならなかったためだ。
「ある時は『僕がこんなふうに演技をするのが正しいのか、違ったらどうしよう』と疑った。『コンクリートユートピア』のように、強い感情が出る映画は特にそうだ。人々に見せる前まで不安感が大きかった。幸いにも、楽しんでいただけたようだ。こういう時は、不安が自信に変わったりもする。俳優とはこのような過程を繰り返す職業ではないかと思う」
1991年にデビューしたイ・ビョンホンは、俳優人生32年を送ってきた。しかし今も担う作品ごとに、その人物に見えるほど、さまざまなジャンルとキャラクターを披露している。
その力はどこから出てくるのかという質問に、イ・ビョンホンは「純粋さを失わないようにしようとする“あがき”が必要だ」と答えた。
「マイケル・マンのような監督を見ると、どうやってその年で、さらにステキで洗練された作品を作るのかと感心したりする。年を取るほど、パワフルでクリエイティブだ。僕は、そのような人の中には子どものような純粋さがあると考えている。それが何かを作り続けるのだ。純粋さを失えば、(俳優としての)光も消えると思う。これを失わないよう、心の中でずっと思い起こしている」
