イ・ソンギュン&チョン・ユミ主演映画『眠り』、夢遊病を素材に混乱を描く
2023年08月21日

ホラー映画といえば大抵は幽霊や怪物のような恐怖に焦点を合わせるが、時には恐怖を感じる人の内面にフォーカスを置くこともある。
こうなると観客は、恐怖というのは一体何なのか、外部から近づいてくるのか、それとも人間の内部から生まれるのかを考えるようになる。
幼少時代、大人たちは私たちに怖い話を聞かせながらも、「幽霊というのは存在しない」、「臆病な人の心が創り出したものだ」と話したりしたものだ。
ユ・ジェソン監督が演出した映画『眠り(原題:잠)』の観客たちも、恐怖について同じように悩むことになりそうだ。
この映画は、新婚夫婦“ヒョンス”(イ・ソンギュン)と“スジン”(チョン・ユミ)の物語だ。2人が住んでいる場所は地下駐車場もエレベーターもない古いマンション。床とドアは古めかしく、湿気のせいかに天井には黄色っぽいシミが付いているが、新婚夫婦の家にはかわいらしさがあふれている。
優しい性格で申し分ない夫ヒョンスが、夢遊病にかかり、おかしな行動をし始めたことから、夫婦の暮らしに亀裂が入る。
医師は“レム(REM)睡眠行動障害”という診断を下し、「よくある病気だ」とし、大したことではないと言うが、スジンにとっては一大事だ。しかもスジンは、臨月の妊婦。
家は、われわれにとって最も心地よい空間だが、真夜中にどこかで正体不明の音がすると、誰もが若干の恐怖は感じるものだ。『眠り』は、音響効果を賢く活用する。映画で恐怖を極大化するのも、ヒョンスの行動自体より、それが闇の中で出す音だ。
ヒョンスの奇異な行動が度を越し、スジンは日増しに敏感になり、徐々におかしくなっていく。映画の焦点もスジンの内面に自然と移されていく。
『眠り』は、極度の恐怖のなかでおかしくなっていく人の内面を覗く、スタンリー・キューブリック監督の映画『シャイニング』(1980)を思い出させる。
ヒョンスが車に乗って病院にいるスジンを訪ねる場面は、『シャイニング』の最初の場面と似ている。丘の間をまっすぐに伸びた道路を車一台が走り、カメラは空中から遠く離れてその後を追う。観客たちは車に乗った人の運命に対して不吉な予感を覚える。
『シャイニング』で恐怖を極大化する要素の中のひとつは、主人公“ジャック”の家族が人里離れたホテルから逃げられないという事実だ。ましてや大雪まで降ってホテルが完全に孤立する。
『眠り』でのヒョンスとスジンはそうではない。ヒョンスは恐怖から抜け出す合理的な解決策を提示したりもするが、スジンは不思議と受け入れない。しかし、脱出口が存在するという事実だけでも恐怖を半減させる要素になりうる。
『眠り』は、ユ・ジェソン監督が脚本を手掛け、演出した初の長編映画だ。
ポン・ジュノ監督の『Okja/オクジャ』の演出チーム出身でもあるユ監督は、最近、『眠り』の試写会でもポン監督を“ロールモデル”に挙げた。ポン監督は『眠り』について、「直近の10年間で見た映画の中で最もユニークな恐怖だ」と高く評価した。
この映画のいくつかの場面は、ポン監督の作品を連想させる。ヒョンスがマンションの階段を上がる時、階下の家の玄関が少し開いており、その間から子どもがぼんやりと眺める場面も、その中のひとつだ。観客たちはそれだけでも何かが起こったと感じる。
『眠り』は、5月にカンヌ国際映画祭の批評家週間に招待され好評を博した。
10月にシッチェス国際ファンタスティック映画祭のメインコンペティションセクションにも招待された。シッチェス映画祭は世界最大規模のホラー・ファンタジー映画の祭りに挙げられる。世界4大国際映画祭に入るトロント国際映画祭で、独歩的な感覚のジャンル映画にスポットを当てる「ミッドナイト・マッドネス」セクションにも招待された。
映画『眠り』は9月6日に韓国で公開され、上映時間は94分、年齢制限は15歳観覧可だ。
