映画『ニューノーマル』のチョン・ボムシク監督、「暴力や死が近くにある現実を描きたかった」

2023年11月08日

「(アメリカの作家)パトリシア・ハイスミスはサスペンスの巨匠だが、彼女の本を読めば“サスペンスとは暴力行為や死の可能性が終始近くにあること”という表現がある。それが今のわれわれの社会だと思った」
最近、ソウル・鍾路(チョンノ)区三清(サムチョン)洞のあるカフェで会ったチョン・ボムシク監督は、8日に公開された『ニューノーマル(原題:뉴 노멀)』を構想することになったきっかけをこのように説明した。
極限の恐怖を醸し出す能力で、“K-ホラーマスター”というニックネームを得たチョン監督が、『コンジアム』(2018)に続いて5年ぶりに輩出した作品である『ニューノーマル』は、恐怖が日常になってしまったわれわれ社会の現実を描いたスリラーだ。
チョン監督は「道を歩いている途中、知らない人、自分とまったく関係のない人が真昼にナイフを振り回し、車が歩道に突進して人々をひき、(不審者が)デパートで人々に凶器を振り回す、そんな事件は安全で平和に見える日常があっという間に死の恐怖に変わる可能性があることを示している」と述べた。
続けて「(範囲を)世界に拡大してみると、戦争のために数多くの人が死んでいくが、これが深化しているという気がする」とし、「サスペンスに満ちた世の中になってしまったのではないか」と反問した。彼はこの時代を「死の可能性が随所に影を落とす世の中だ」と表現したりもした。
『ニューノーマル』はチョン監督の前作である『1942奇談』(2007)や『コンジアム』とは異なり、誰もが経験しうる極めて日常的な事件を素材にしている。
いくつかのエピソードで構成されたオムニバス形式であるこの映画は、一人暮らしの女性の家に予告もなく火災警報器の点検員が訪ねてきて起きる事件で始まる。エピソードが日常的な事件を恐怖に急変させる奇抜などんでん返しが目を引く。
この映画のエピソードは、それぞれ完結した話だが、登場人物の関係を通じてつながっている。これに対してチョン監督は、「われわれが住んでいるニューノーマルの時代がこのような形で連結されており、お互いに影響を与えるということを見せようとした」と説明した。
『ニューノーマル』では女優のチェ・ジウ、イ・ユミ、SHINeeのミンホ(チェ・ミンホ)、Block BのP.O(オヨ・ジフン)、ハ・ダイン、チョン・ドンウォンなどがそれぞれのエピソードで主人公として登場する。チョン監督は撮影当時、彼らがお互いにどのようにつながっているのかは知らないまま演技するようにしたという。彼らのつながりの構造を発見するのは観客の役目として残した。
この映画には、彼らが各自のスマートフォンを見ながら“一人飯”をするシーンが出てくる。これについてチョン監督は、「この時代を生きていく人々の寂しくてわびしい自画像のようなものを観客たちと共有してみたかった」と打ち明けた。
“メロクイーン”として挙げられるチェ・ジウはこの映画でスリラーの主人公になり、演技変身を披露する。チョン監督は、「(初めて出演をオファーした時、チェ・ジウさんが)『監督、なぜ私のことを考えたのですか?』と尋ねた」と笑った。
チョン監督は、「俳優がキャラクターにはまりすぎず、演技も安定的で、大衆的な好感度も備えること、そして俳優たちの組み合わせを観客たちが白々しく感じないように新鮮に作り上げることが、キャスティングの第一原則だった」と述べた。
トロット歌手として大衆に人気が高いチョン・ドンウォンにとって『ニューノーマル』は、スクリーンデビュー作となる。
チョン監督は、「(チョン・ドンウォンが務める配役は)中学生が持つ世の中に対する好奇心と不安感、ある決定をしなければならない時の優柔不断さと恐怖、そのようなものが表現できる“本当の現実の子ども”が必要だった」と、チョン・ドンウォンが適任者だったと打ち明けた。
演技経験がないチョン・ドンウォンはチョン監督から直々に演技指導を受けたという。チョン監督はチョン・ドンウォンに対して、「(演技の)メカニズムを理解してからは自信を持って飛び回った」と称賛を惜しまなかった。
チョン監督は、恐怖を作り出す秘訣は何かという問いに、このように答えた。
「俳優と脚本の力だけを持っていく映画よりは、自覚的で聴覚的な設計を通じてサスペンスを調整し、観客と“駆け引き”する方式が好きだ。古典映画で見られるサスペンスの調整方法を活用したから、観客たちに恐怖がしっかり伝わったのではないかと思う」

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