映画『ソウルの春』のキム・ソンス監督、「12・12の渦に巻き込む映画」

2023年11月15日

22日に韓国で公開されるキム・ソンス監督の新作『ソウルの春(原題:서울의 봄)』は、1979年12・12軍事反乱(粛清クーデター)の緊迫した9時間を描いた作品だ。
パク・ジョンヒ(朴正煕)大統領が暗殺されて2か月も経たないうちに発生した12・12は、権力者のいない時期に保安司令官を務めたチョン・ドゥファン(全斗煥)を中心にした韓国国内の私組織「ハナ会」が武力を動員して軍の指揮権を掌握した事件で、新軍部集権の信号弾だった。
「話が繰り広げられる9時間の渦の中に観客たちが入ってくるようにした。ドキュメンタリーとドラマの中間のどこかで、観客が当時の状況をリアルに見ているような感じを与えようとした」
『ソウルの春』の公開を控え最近、ソウル・鍾路(チョンノ)のあるカフェで会ったキム監督はこのように語った。
この映画はチョン・ドゥファン保安司令官をモデルにしたチョン・ドゥグァン(ファン・ジョンミン)と彼に対抗したチャン・テワン(張泰玩)首都警備司令官をモデルにしたイ・テシン(チョン・ウソン)を中心にストーリーが繰り広げられる。『アシュラ』(2016)でタッグを組んだキム監督と2人の俳優が再び手を組んだ。
ファン・ジョンミンとチョン・ウソンの他にも、イ・ソンミン、パク・ヘジュン、キム・ソンギュン、キム・ウィソン、チョン・マンシク、ユ・ソンジュ、アン・ネサン、特別出演したチョン・ヘイン、イ・ジュンヒョクなど人気俳優たちが数人登場する。
キム監督は「まるで(テレビで)取材する時に(カメラが現場で)追いかける感じが蘇らなければならないと考え、すべての俳優が絶えず動くようにした」と述べた。
演技力が立証された俳優たちなので、特別な演出指示がなくても状況にぴったりの絶妙な動作を見せたとキム監督は振り返った。
この映画のクライマックスは反乱軍と鎮圧軍がソウルの世宗(セジョン)路で対峙し、一触即発の状況まで行く場面だ。エキストラを含め、最も多い人数が集まった時は150人に達したという。
誰が見てもソウルの真ん中に見えるが、実際の撮影は全羅南道(チョルラナムド)光陽(クァンヤン)の広い埠頭で行った。
キム監督は視覚特殊効果(VFX)も活用したとし、「1976年12月12日の世宗路を再現するのが本当に難しかった。すれ違う小物や衣装、雰囲気も実感がわくようにした」と説明した。
キム監督はチョン・ドゥグァン役のファン・ジョンミンについて、「魔術師、魔法使いのような俳優」、「消えない火のような俳優」と絶賛した。
彼はファン・ジョンミンがシェイクスピアの時代劇「リチャード3世」の公演で狂気に満ちた主人公のリチャード3世を演じたのを見たことを思い出しながら、(チョン・ドゥグァン役は)ファン・ジョンミン以外にいなかった」と述べた。
映画の中のファン・ジョンミンは、特殊メイクでヘアスタイルを完全に変えた。製作陣は5個のかつらを製作し、ファン・ジョンミンがそのシーンに合わせて違う物を着用したため、映画をよく見ればヘアスタイルの繊細な変化も感じられるとキム監督は説明した。
彼はイ・テシンのキャラクターについては、「(1979年当時よりは)最近の時代にふさわしいリーダー、すなわち落ち着いて説得力があり、大声を出さない人だ」とし、「その時に例えるなら、寡黙で“ソンビ”(両班層の理想像)のように揺るがず、自分の地位を守った父親のようだ人物だ」と述べた。
続けて「チョン・ウソンこそそんな人だ」とし、「チョン・ウソンに『本人の性格や態度をキャラクターに反映してほしい』と注文した」と付け加えた。
12・12軍事反乱当時、キム監督は19歳だった。彼は反乱勢力がチョン・スンファ戒厳司令官を逮捕する過程で発生した襲撃の音を漢南(ハンナム)洞の家で聞いたことを今も忘れられない。
「その日一体何が起きたのか」という質問が、彼をとらえた。その時から12・12は彼にとって人生の謎であり宿題となった。
そんなキム監督が2019年秋に製作会社からこの映画のシナリオをもらった時、感慨は格別だったという。
彼は「シナリオをもらった瞬間からその世界に陥った」とし、「『果たして僕がやり遂げられるだろうか』という震えと興奮もあった」と思い出した。
そうして1年悩んだキム監督は12・12の映画化で人生の宿題を解くことを決心し、脚色を含む準備過程を経て、昨年2月に撮影に入った。
キム監督はこの映画の演出をためらったことについて、「軍事反乱を起こした人々が映画の中心にいるので、映画を撮ったら彼らが“カッコいい悪党”のように描写されるのではないかという心配があった」と打ち明けた。
それで考案した方法が反乱軍に対抗した人々に力を入れることだった。12・12当時にもチャン・テワン首都警備司令官を中心に反乱鎮圧に出た軍人たちがいたが、まともな抵抗をすることはできなかった。
キム監督は「歴史的事実を土台にするものの、反乱軍に対抗した軍人たちの話を浮き彫りにし、想像力を発揮し首都警備司令官のキャラクターを拡張しながら、彼の視線についていけばどうかと思った」と述べた。
しかし何より重要なのは、1本の面白い話を描き出すことだった。
「私は歴史家ではない。十分に調査して資料を得たぶん、私が考える面白い話を作ることにした。面白さを追求しつつも、私が言おうとしているテーマや実際にあった事件の骨組みから抜け出さないという2つの原則を守ろうとした」

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