ヒーローではない平凡な人々の力…ラ・ミラン主演映画『市民ドクヒ』

2024年01月12日

“金もなくバックもない”平凡な女性4人が暴力と資本を備えた巨大犯罪組織に立ち向かい、社会正義を実現できるだろうか。
パク・ヨンジュ監督が演出した映画『市民ドクヒ(原題:시민덕희)』は可能だと答える。4人の女性が正義感と良心、そして苦痛を分け合う友情を持っているならば…。
『市民ドクヒ』は振り込め詐欺に遭った平凡な中年女性ドクヒ(ラ・ミラン)が妹分の女性3人と力を合わせて、中国に拠点を置く振り込め詐欺の犯罪組織のボスを捕まえに乗り出す話だ。
ドクヒはクリーニング店を運営していたが火災に遭い、クリーニング工場に就職した人物だ。映画は長い前置きなしに単刀直入にドクヒがソン代理という人の電話を受けて振り込め詐欺に遭う場面から始まる。
嘘につられて大金を失ってしまったドクヒは警察署を訪ねるも、パク刑事(パク・ビョンウン)は気が進まない。振り込め詐欺犯罪を解決するのは極めて難しいというパク刑事の言葉にドクヒは失望する。
失意に陥ったドクヒにまたソン代理が電話をかけ、話はどんでん返しを迎える。ソン代理は中国の青島(チンタオ)に拠点を置く振り込め詐欺組織に拉致され、強制的に犯罪に加担することになった韓国の青年ジェミン(コンミョン)だ。
ジェミンはドクヒに組織の情報を提供すると言って助けを求め、ドクヒは青島に渡る。クリーニング工場の同僚である朝鮮族出身のボンリム(ヨム・ヘラン)とスクジャ(チャン・ユンジュ)がドクヒと共にし、現地でボンリムの妹エリム(アン・ウンジン)も合流する。
この映画のサスペンスは、振り込め詐欺の犯罪組織を打ち負かそうと試みる彼女たちが極めて平凡だということから出ている。
観客は彼女たちに容易に感情移入され、弱そうに見える彼女たちが恐ろしい犯罪組織に近づくとき、気を揉む。振り込め詐欺組織の総責任者(イ・ムセン)が闇の中にいて、後半部になってようやく顔を出すのもサスペンスを加える。
平凡な人物たちを前面に出したこの映画は、絢爛たるアクションで観客の目を引くよりは、彼女たちがとんでもない行動をしたり、臨機応変に予想できなかった結果を作り出したりすることを見せながら痛快さと笑いを誘う。
『市民ドクヒ』は、ヒーローではない平凡な市民たちの力を信じる。正義感と友情でひとつになった市民たちに勝てるものはないと言っているようだ。彼女たちの友情は貧しい生活を乗り越えながら、自然に形成された連帯から生まれる。
振り込め詐欺をテーマにしたキム・ソン、キム・ゴック監督の映画『声 姿なき犯罪者』(2021)とも対照的だ。
『声 姿なき犯罪者』では、振り込め詐欺の組織を一網打尽にする主人公ソジュン(ピョン・ヨハン)が元刑事として犯罪組織の実態を見抜いているうえに、格闘スキルも優れたヒーローに近い。『市民ドクヒ』では女性たちだけで構成されたグループが、男性中心の犯罪組織に立ち向かう点も目に付く。
『市民ドクヒ』は、実話をモチーフにした作品で、振り込め詐欺に遭った京畿(キョンギ)道華城(ファソン)の中年女性が、2016年に振り込め詐欺の組織員から得た情報を警察に提供し、組織の総責任者を捕まえるのに決定的に寄与した事件だ。映画でドクヒが中国に渡って起きることは、劇的な面白さのために作り出された話である。
実話を基にしたとしても、警察すらどうにもできない犯罪組織を平凡な人々が倒す話は、ファンタジーに近い。こんな話を想像すること自体、庶民を食い物にする振り込め詐欺問題を根絶できないもどかしい現実に対する問題提起とも見ることができる。
また、この作品でもラ・ミランの演技が際立つ。彼女は最悪の窮地に追い込まれて途方に暮れても、国家が助けてくれない時は自ら問題を解決しようと乗り出すほど粘り強い。自分に被害を与えた人だとしても、その境遇に共感し同情できる中年女性をリアルに再現する。ヨム・ヘランとチャン・ユンジュ、アン・ウンジンがラ・ミランと作り出すテンポのいい会話も自然だ。
『ソンヒとスルギ(原題:선희와 슬기)』(2019)など中・短編を演出してきたパク・ヨンジュ監督にとって『市民ドクヒ』は、商業映画のデビュー作となる。
パク監督は11日の試写会で、「振り込め詐欺の被害者たちが『私が愚かなせいでやられた』と自責するのが一番やるせなかった」とし、「被害者が自尊心を回復して日常に戻る過程を描いてみようと思った」と述べた。
青島で繰り広げられる話は、現地で撮影したわけではなく、韓国のセット場で撮影した。製作陣は入念な現場踏査と取材を経て、青島の町並みを再現したという。
映画『市民ドクヒ』は24日に韓国で公開され、上映時間は113分、年齢制限は15歳以上観覧可だ。

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