初の聴覚障がい者アイドルBig Ocean、「聞こえなくても歌うことができる」
2024年04月09日

「聴覚障がい者は歌えないという偏見を消したかった。新しい開拓地なので、困難はあるだろうが、正式に歌手として挑戦するのだから、聞こえないというのは言い訳にはならない」
聴覚障がい者であるメンバーで構成されたアイドルグループが、K-POP市場に初めてデビューする。20日の障がい者の日にデビューシングル「Hope」を出す3人組グループBig Oceanだ。
人口内耳と補聴器に頼るといっても、さまざまな楽器のサウンドと割れるビートに合わせて、歌って踊るのは並大抵のミッションではない。
最近、江南(カンナム)区のPARASTARエンターテインメントのオフィスで会った3人のメンバー、パク・ヒョンジン(25)、イ・チャンヨン(26)、キム・ジソク(21)は、「歌が上手だとは言えないが、成長して挑戦しようとする意志は他の歌手たちと変わらない」と笑って見せた。
懸念とは裏腹にメンバーたちとの意思疎通に困難はなかった。彼らは人口内耳のせいで他の人の声が機械音のように聞こえても、記者の口の形を見て類推し、積極的にコミュニケーションを図った。
このグループは、アナウンサー出身のチャ・ヘリが「88ソウルオリンピック30周年」イベントで縁を結んだ障がい者選手たちを助けるために、2020年に設立した芸能事務所から出発した。
グループは所属事務所の設立と共に合流したパク・ヒョンジンを主軸に構成された。高熱で3歳の時に後天的な聴覚障がいを負った彼は、以前までかなり認知度のあるYouTubeクリエイターだった。「聴覚障がい者は皆手話をする」という偏見を状況劇で見せる映像でチャンネル登録者5万人を集めた。
キム・ジソクは高校生だった2022年、パク・ヒョンジンが出演した公演を見に行ったところ、今の所属事務所の目にとまった。先天的な聴覚障がいがあった彼は、中学2年の時からソウル市障がい者スキー協会の選手として活動していた。日頃から新しい挑戦を夢見ていた彼は、ヒョンジンを見て勇気を得て選手生活をやめた。
最年長のイ・チャンヨンは高麗(コリョ)大学安岩(アンアム)病院で患者の聴力検査をする聴能師として働いた。小学校3年の時に出した高熱のせいで後天的に障がいを負った。彼は、「映画『コーダ あいのうた』に出演した聴覚障がい俳優トロイ・コッツァーが、2022年に僕の働いていた病院の広報大使に委嘱され、その席に招待されて行った」とし、「その時、聴覚障がい者の社会で有名な聴覚障がい俳優キム・リフ先輩に会い、そのおかげでオーディションを受けることになった」と振り返った。
メンバーたちは各自の成長過程を語りながら、傷になった記憶も打ち明けた。
「小学生の時に会長をしていたが、中学校に進学して性格がよくない友人たちにも会った。わざと聞き取れないような声を出したり、声を出していないのに出したふりをしたりする友人たちもいた。同じクラスに他の障がいを持った友人がいたが、『障がい者同士で仲良くなれ』とかわかわれたこともあった」(パク・ヒョンジン)
イ・チャンヨンも「僕が聞き返すと、あからさまに友人たちの表情が悪くなった」とし、「次第に友人たちを遠ざけ、友人たちも僕を遠ざけて、学生時代は友人がいなかった。本をたくさん読んで本が友人となった」と述べた。
彼らが存在を初めて知らせる楽曲は第一世代のアイドルグループH.O.T.の代表曲「Hope」だ。この歌をリメイクし、韓国語手話(KSL·korean sign language)や英語手話(ASL)、国際手話(ISL)で歌いダンスも披露する。ラップなど一部の部分ではライブを加える案も出ている。
宿所生活をしながら1年半ほど準備したが、過程は容易ではなかったという。
パク・ヒョンジンは「ボーカル授業の時、僕が音程を正確に合わせられているのか分からなかった」とし、「音を上げたいのに声だけが大きくなったりもした。音程の感覚をつかむのが難しかったが、腹式呼吸で筋肉を使いながら音を上げる方法を学んだ」と述べた。
レコーディングの過程も他の歌手とは違った。メンバーたちが数えきれないほど録音した声のデータを集め、人工知能(AI)のディープラーニングプログラムの助けを受けた。
パク・ヒョンジンは「これから成長する僕の姿をあらかじめ見ているようで不思議だった」と述べた。キム・ジソクも「たくさん努力して僕の声を完全に表す日が来ればいい」と付け加えた。
特殊学校で手話を学んだキム・ジソク、大学時代に聴覚がい害サークルで手話を身につけたパク・ヒョンジンと異なり、イ・チャンヨンは歌手の準備をしながら手話を初めて学んだ。最初の映像でたどたどしい動作を見せていた一部メンバーのダンスの実力も急成長した。
問題は実際のステージだった。普段はノイズがない(ノイズキャンセリング)空間で特別な装置なしに振り付けの練習をするが、多様な音が混ざる番組と公演ステージでは状況が違う。メンバーたちは「音楽は割れるビートが多く、振り付けの動作も躍動的なので(そんな空間では)ビートを正確に認知するのが難しい」と述べた。
PARASTARエンターテインメントはノイズが多い状況に備え、観客の携帯電話の助けを受ける光メトロノームと手首に着用する振動メトロノームを活用することにした。この過程で既存の光メトロノームを新たに活用する技術を開発し、SKテレコムの支援で2月にスペインで開かれた「MWC2024(モバイルワールドコングレス)」にも参加した。チャ・ヘリ代表は「安定したステージのためにメトロノームがAIボイス関連技術業者と協約を結ぶか、これらの製品を導入してみようと思う」と述べた。
Big Oceanは正式デビュー前にYouTubeやTikTokなどでコミュニケーションを図り、それぞれ数万人のチャンネル登録者を集めた。英語手話もして難聴者に対する認識が韓国より開かれている海外でまず注目され、外国語で書かれたコメントが多数を占めた。最近、SMエンターテインメントのグループRIIZEと共に行ったチャレンジ映像も話題となった。
メンバーたちは「初のシングル『Hope』は、希望的なエネルギーを感じさせてくれる楽曲だ」とし、「大きな海に伸びていくというグループ名のように、海外でも認められ、ひとつの言語である手話と希望的なエネルギーを伝えたい」と述べた。
今月24日に初ステージを披露する彼らは、一時的な話題にとどまらないよう、1か月おきに2曲の新曲を披露する計画だ。すでにレコーディングと振り付けの準備も終えた。
パク・ヒョンジンは「不安定な道だが挑戦する」とし、「僕たちの社会にはさまざまな種類の障がいがある。これを乗り越えて黙々と活動するアーティストたちが世の中にたくさん出てほしい。障がい者とそうではない人の区別なく、調和する真のバリアフリーを目標にしたい」と強調した。
イ・チャンヨンは「韓国社会では障がいがあると壁ができてしまうが、そうではないというメッセージを伝えたい」と言葉を加えた。キム・ジソクも「萎縮せずに夢を見ることができれば幸いだ」と述べた。
