人文学的想像力への刺激…ホン・サンス監督作品『川沿いのホテル』
2019年06月17日

ホン・サンス監督の23作品目の長編映画『川沿いのホテル』は初めてタイトルを見た瞬間、好奇心と想像力が発動する。
単純に空間的な背景が川沿いのホテルということではない、‘川(江)’が持つ豊かな隠喩に興味が湧く。
まず、単語の組み合わせが目に留まる。‘川(江)’は流れるもので、‘ホテル’は動かない場所である。二つの概念は衝突しているが、同時に自然に呼応する。「流れて留まる場所」が川沿いのホテルだろう。ひょっとするとそれ自体が私たちの人生なのかもしれない。
映画『川沿いのホテル』でキ・ジュボン演じる主人公の詩人は、何の根拠もなしに死にそうだと感じて川沿いのホテルに宿泊し、長い間、連絡が途絶えていた二人の息子を呼ぶ。
それでいて詩人はまるで「ヴェニスに死す」の主人公の老人小説家が美少年を追い求めその神的な美しさに魅了されるかのように、同じホテルに宿泊している二人の若い女性に「本当にお美しいです」という言葉を何度も繰り返したりする。
撮影地である南楊州の北漢江辺という特定の場所ではなく、「川(江)」という一般名詞が何度も想像力を刺激する作品だ。
