「第24回釜山国際映画祭」のオープニング作品『オルジャスの白い馬』、見どころは映像美と節制された感情
2019年10月04日

“映画の中の音と形状は国籍に関係なくすべて観客に響きを与えるだろう”
「第24回釜山(プサン)国際映画祭」のオープニング作品『オルジャスの白い馬』が今月3日の開幕式に先立ち「釜山・映画の殿堂」の中劇場でマスコミに公開された。
この映画は2000年代序盤のカザフスタンの田舎を背景に、ある家族に起こった出来事を少年の視線で描いた作品だ。
家族を愛する1人の男が馬を売るために町の市場に行き馬泥棒に殺害され、村の人々と家族たちはともに葬式を執り行う。
夫を見送った妻は3人の子どもとともに実家の村へ引っ越しをしようとし、彼女の前に8年前消息が途切れた男が現れる。彼は自分にそっくりの女の息子とともに引っ越しの準備を手伝う途中、馬泥棒たちに出くわす。
映画は数日間に起こった出来事を時系列に描くが、愛と死、複数の叙事がすべて盛り込まれ、まるで西部劇を連想させる。
感情とセリフは節制されているが、その余白から深い悲しみや人間史の慌ただしさも感じられる。映画は少年の視線で展開され、1人の少年の“成長痛”としても読み取れる。
何より優れた映像美が視線を捕える。広大でありながらも荒涼とした草原やその上を疾走する馬、遠くに広がる雪に覆われた山や青空などが、場面ごとに一枚の風景画のように繰り広げられる。
2013年の「第63回ベルリン国際映画祭」の銀熊賞(ぎんくましょう)芸術貢献賞を受賞したアジズ・ジャンバキエフ撮影監督が撮影を務めた。
チョン・ヤンジュン釜山映画祭・振興委員長はこの作品に対して「広い中央アジアの草原を背景に牧歌的な生活の抒情性と暗い裏面をワイドスクリーンとロングショットの美学を活用し繰り広げた」とし「同時に時間の流れによって善と悪のすべての出来事が進むことを示している」と説明した。
カザフスタン人のエルラン・ヌルムハンベトフ監督と日本人の竹葉リサ監督が共同演出を務めた両国合作映画である。
映画『アイカ』(2018)で昨年カンヌ国際映画祭の女優主演賞を受賞したカザフスタン人女優のサマル・イェスリャーモワと、在日韓国人李相日(イ・サンイル、り そうじつ)監督の『怒り』で強い印象を残した日本人俳優の森山未來が出演した。
ヌルムハンベトフ監督は同日の試写会後の記者会見で「カンヌ映画祭で出会った竹葉リサが私のシナリオに関心を持って一緒に演出することになった。現在、日本は中央アジアとの共同制作に関心が高い」と伝えた。
彼は「日本の俳優をカザフスタン映画に起用したのは制作だけでなく演技の側面からも興味深く、良い試みだった」と振り返った。「特定の観客層を対象にした作品ではない」としながら「全体的な音と形状が誰にでも響きを与えるだろう」と述べた。
2015年に演出した映画『くるみの木』で釜山映画祭のニューカレンツ賞を受賞した彼は「受賞がその後の私の作業に大きな原動力になった」とし「さまざまな観点を持った観客たちに私の作品をお見せするきっかけとなった」と述べた。
デビュー作『さまよう小指』(2014)で2014年の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」のグランプリを受賞した竹葉リサ監督は、「カザフスタンの映画撮影方式が非常に柔軟で驚異的だった。日本では緻密な準備作業を好むが、カザフスタンは撮影するたびに柔軟に変わる様子を見ながら、このような面が遊牧民族の驚異さではないかという気持ちになった」と回想した。
昨年カンヌ映画祭の受賞後、ヨーロッパなどで多くのラブコールを受けた俳優のサマル・イェスリャーモワはこの映画で悲しみを内面に飲み込む節制された演技で強い印象を残した。彼は「どんな場所でも監督の性向によって私の演技スタイルは変わる。最も重要なのは監督が持っているアイデアをどのように実現するかだ」と演技観を明かした。
日本の俳優、森山未來は母国語ではなくカザフスタン語で演技をした。
彼は「カザフスタン語をまったく知らないので台本にある通りに暗記して演じなければならなかった」と振り返った後、「単純でありながらも節制された言語を通じてカザフスタン大地の気運が映像に収められたようだ。作品全体を観た後には叙事詩や神話を読んだような気持ちになった」と感想を述べた。
