振り込め詐欺を描く映画『ボイス』のキム・ソン監督、「被害者が悪いわけではないことを伝えたかった」
2021年09月29日

累積観客数100万人突破を目前にした犯罪アクション映画『ボイス(原題:보이스)』は誰もが一度は受けたことがある振り込め詐欺の電話を余すところなく暴いていく。
就活生、マンション分譲の申請者など電話を受ける被害者の感情を刺激するように組まれた台本に始まり、韓国のATMから現金を引き出す“出し子”、一度も実態が明るみになることがない中国に本拠地を置くコールセンターまで、振り込め詐欺の解剖図を見せていく。
キム・ソン監督は28日、リモートインタビューを通じて映画の最も重要な要素に“現実性”を挙げ、警察、金融監督院、ホワイトハッカーなどから振り込め詐欺犯罪の実態を念入りに調査した過程を伝えた。ともに演出を務めた双子の兄キム・ゴク監督は個人的な事情でインタビューに参加できなかった。
キム監督は「振り込め詐欺が社会問題となったのは随分前のことだが、映画やドラマではエピソードのひとつとして使われるレベルだった」とし、「敵陣の中に入り、その中の邪悪な気運を、主人公を通して観客が全身で感じられるようなシナリオを書きたかった」と述べた。
さらに「振り込め詐欺は組織化されて点在しており、非常に浅く広く生活の所々に浸透している。これを段階に分けて見せていくのは無理だったが、できるだけたくさん映画に盛り込もうとした。コールセンターがメインの空間だが、出し子や不法な外国為替取引をする機械、電話の発信番号を操作する機能なども配置し、最大限、リアルに演出しようと努力した」とも明かした。
映画は振り込め詐欺の組織の罠にかかった元刑事ソジュン(ピョン・ヨハン)が、自身と工事現場の同僚たちの奪われた金(カネ)を取り戻すために中国にある本拠地のコールセンターに潜入する物語。
リアル犯罪アクションを掲げただけにディティールにも現実性を加えようと努力した。電話をかけるアルバイト生のほとんどを韓国から中国に渡ってきた韓国人に、コールセンターを管理する中間職を朝鮮族に設定した。これは事前調査で得た情報を生かしたものだ。映画序盤に登場する金を引き出した後に被害者に再び電話をかける加害者の冷やかしも実際に存在することだと伝えた。
これに加え、被害者の携帯電話にインストールされた、すべての発信電話をつながらないようにする悪質なアプリ「カロチェキ」もホワイトハッカーのサポートで実際に体験してみたという。キム監督は「どんな過程か知っていたが、実際に目の前で繰り広げられることを見て本当にうろたえた」と述べた。
さらに「実際に被害に遭った方々は『騙されないわけがない』と一貫して言う。電話に出た瞬間、恐怖が入り込んできて電話を切ることができないのだ。その一方で被害者たちは『自分があまりにもバカだと思った』と自責する。映画で『皆さんの過ちではありません』というセリフが出てくるが、このことを本当に伝えたかった。“あいつら”が悪らつなのでやられるしかなく、被害者が悪いわけではない」と強調した。
映画で振り込め詐欺の組織員たちは、金に対する欲望にまみれ、一抹の罪悪感も持たない悪魔のような存在に描写されている。キム監督は振り込め詐欺の最も残酷な点は、顔の見えない犯罪で加害者が罪悪感を持てない点だと指摘した。
彼は「振り込め詐欺はスマートフォンのような情報媒体とともに進化する犯罪なので、根絶できないと思う。そのため、韓国社会がもっと追いかけなければならない犯罪」だとし、「映画が、社会に警戒心を呼び起こす助けとなり、犯罪にあった方々には少しでも励ましになればと思う」と述べた。
今月15日に公開された映画はボックスオフィス1位の座を守っており、前日までの累積観客数は約96万人にのぼった。
