リュ・スンワン監督、「水中アクションが『密輸』を作ろうと決めた理由」

2023年07月27日

「海女たちの水中アクションシーンは、私がこの映画をやろうと決めた大きな理由の一つ。後にも先にも作れないシーンだと思った」

新作『密輸(原題:밀수)』」で帰ってきたリュ・スンワン監督は26日、ソウル・鍾路(チョンノ)区のカフェで行われたインタビューで、この映画を演出するようになった背景をこう説明した。

『密輸』は、1970年代の仮想の海岸都市“クンチョン”を舞台に繰り広げられる海女たちの密輸犯罪を描いた作品だ。これまであまり見ることができなかったキャラクターと素材、そこにリュ監督の特技であるアクションが組み合わせられた。

特に、訓練を受けた男性ではなく、生計のために海女をしていた平凡な女性たちが海の中で繰り広げる水中アクションが、この映画のハイライトだ。

リュ監督は、「私の立場から見ると、海女たちは自分の限界を上回る超能力者のようだ」とし「このような人々が、何の装備もなしに体一つで水中アクションをやれば、新しさとサスペンスを与えられると考えた」と話した。

「フィルモグラフィーをある程度、積み上げた監督たちは、“新しさ”と“お馴染み”の間でジレンマに陥る。観客が私の映画に期待することを、充足させると同時に、どれほど新しく踏み出せるかについての悩みにいつもぶつかっていた。海が背景の映画という点は、ジャンル面では十分に新しいと判断したし、“密輸”という素材は、観客が連想するイメージがあるため、そのバランスをしっかり取ることができるだろうと考えた」

アクションはリュ監督の得意分野だが、水中アクションは経験がないので彼にとっても挑戦だった。アーティスティックスイミング韓国代表出身のキム・ヒジンコーチと彼女が率いるチームの助けを借り、長い時間をかけてシーン一つ一つを研究しなければならなかった。

「『モガディシュ 脱出までの14日間』を撮影しながら感じたことだが、経験がないことをする時は絶え間ないテストと練習が必要だ。私はよく映画作りを「象を冷蔵庫に入れる方法」(タイトルだけ見るとまるで不可能なことだが、それを可能にする方法があるという例え)と比べたりする。冷蔵庫のドアを開ける。象を冷蔵庫に入れる。冷蔵庫のドアを閉める。制作陣全員が頭を突き合わせて考えていたら、ある瞬間その問題が解決し、できているのが映画だ。私が映画をやめられない理由だ」

リュ監督は、海女役を担った主演俳優キム・ヘスとヨム・ジョンアが、まともに泳げないという事実も克服しなければならなかった。キム・ヘスは水を見るとパニックになり、ヨム・ジョンアは一度も泳いだことがなかった。

「2人に、こんな映画を作ると資料を見せしながら出演をオファーした。その後しばらくしてそのような事情を知った。“この映画は白紙になるかもしれない”と思っていたところ、“とりあえずやってみる”との返事をいただいた。私の経験上、俳優たちはどんな悪条件においても演技すると決心したら、やり遂げる分類の人たちだ。それを信じた。結局、“いつそんなことを言った?”とでもいうふうに2人は泳げるようになった」

リュ監督は、長い間キム・ヘス、ヨム・ジョンアのファンだったため、『密輸』を必ず一緒にしたかったと強調した。

「彼女たちが共演する映画が意外となかった。今回、撮影してみると2人の調和がとてもよかった。キム・ヘスさんは、熱くて攻撃的な演技を、ヨム・ジョンアさんは冷たい演技を見せてくれた。お互いに競争しようともしなかった。『密輸』で2人の俳優と作業したいという私の夢がかなった。とても誇らしい仕事だと思う」

『密輸』は、今夏劇場界に登場する韓国大作映画4本の中でも最初に公開された(今月26日公開)。ハリウッド映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』もヒットしているため、『密輸』としては甘くない状況だ。

しかしリュ監督は、「2年前、その過酷な時期に映画を公開した」とし「その時よりも厳しいだろうか」と問い返した。

彼は、コロナ禍で午後7時以降の上映が制限され、座席数も減らされた2021年7月、240億ウォン(約26億円)が投じられた大作『モガディシュ 脱出までの14日間』を劇場公開した。同作品は、その年に公開された韓国映画の中で最も多い361万人余りの観客を動員し、劇場界に恵みの雨をもたらした。

「改めて考えても、当時はとても憂鬱だった。何をしてもダメで、人と人が対面すること自体がタブー視されていた時期だったから。誰かが犠牲にならなえればという思いまでではなかったが、私もそれなりに映画界で少なくない時間を過ごした人だから、私たちだけでもやらなければ、本当に大変なことになると思い、公開を決心した」

映画に対する愛情が大きいせいか、リュ監督はオンライン動画サービス(OTT)シリーズに挑戦する他の監督とは異なり、映画にだけにこだわっている。

彼は「シリーズ演出のオファーがないといえばウソだ」と笑った。

「映画『太白山脈(原題:태백산맥)』、ドラマ「土地(原題:토지)」のように3~4時間では消化できない物語がある。そのようなものは当然、ドラマとして作らなければならない。しかし、まだ私はそのような物語を扱いたくない。“劇場用の映画を諦めてまでしなければならないだろうか?”と思う。私にとっては、いまだに劇場で映画を見ることが手放せない。それが生き甲斐だ」

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